ライトな二人ー9−







「黄金聖闘士の方々は、もうお部屋で待ってます。」

「十二人全員?」

「はい。正確には十四人ですけど。」

黄金聖闘士達が控えている部屋に向かいながら、沙織とは黄金聖闘士達について話している。

「緊張するな。昨日、アイオロス達が言っていた事も気なるし、スペシャルゲストっていうのも教えてくれないで。」

「楽しみは取っておいた方が良いという事ですわ、さん。」



ある一室には黄金聖闘士が勢ぞろいしていた。聖域に全員集まるのは聖戦以来だ。

今日は堅苦しい場ではないが、アテナに拝謁のため、黄金聖闘士の正装・黄金聖衣を、教皇シオンと、双子座の聖衣を弟カノンに譲った教皇補佐サガはそれぞれ法衣を着用していた。

「む。」

シオンが顔を上げて扉の方に向けると、全員が扉の方に視線を集中させた。

「いらっしゃったようだ。」

シオンが言ったのを合図にしたように、アテナとその友人を出迎える準備をする。



「この部屋です。」

沙織とが扉の前に立つと、実にタイミング良く、扉が開いた。

そのまま沙織の後に続いて中に入ると、唖然とする。

黄金に輝く集団が、跪いて頭を下げているのだから。

そんな光景は何時もの事なのか、沙織は気にする様子もなく彼らの前に歩み寄る。

「皆さん、顔を上げて下さい。」

沙織の声で一斉に顔を上げる様は、さしずめ訓練された軍隊の様だ。

昨日会ったばかりの顔に混じってやはり知らない顔が何人かいた。

「遠路遥々、聖域に出向いて貰った方々にはご足労様でした。今回は緊急事態による非常召集ではありませんので、皆さん肩の力を抜いて下さい。」

それに、と沙織が付け加える。

「そんなに畏まっていては、こちらの女性のかたが身を引いてしまいます。皆さん立って下さい。」

突然自分に話が振られは、えっ、と気付かれないように驚く。

沙織に言われた通りに全員立ち上がり、マントの衣擦れの音が静かに響く。

背高い! 全員180以上あるんじゃない。

私も背は低くはないけど、これだけの体格が揃うと威圧感がすごい。

全員立ち上がったのを確認すると、今度は私の背を軽く押す。

「ご紹介します。日本で私の秘書を務めて頂いている、さんです。私とさんはもう十年のお付き合いになる、友人でもあります。皆さん、よろしくお願いします。」

沙織からの紹介を受けて、全員の目が私に集中する。一瞬身が竦んだが、努めて明るく喋るよう心がけた。

です。皆さんの事は星矢達から聞いてますので、お名前は知ってますが、顔はまだ分かりません。早く覚えたいと思います。昨日お会いした方もいますが、改めてよろしくお願いします。」

笑顔ではきはきと話すは、今日初めて会った者達に好印象を持たせるには充分だった。

彼らと決して縁浅くない星矢の名前が出たのも理由の一つであるが、何より彼らのアテナがを見つめる眼差しが全てを物語っていた。

デスマスクなどは、先程天蠍宮で言われた事が本当の事であると、認めるしかなかった。

「こちらの紹介をしよう。昨日、既に済んでいる者もいる故、それ以外の者達で、下から順番だ。」

シオンに言われ、何人かがの前に歩み寄って来た。



「双子座のカノンだ」

「蟹座、デスマスク」

「乙女座、シャカ」

「天秤座の童虎」

「山羊座のシュラ」

「水瓶座、カミュ」

「魚座のアフロディーテ」

それをは、聞いていた名前と顔を覚えるように、ふむふむと頷きながら聞いていた。

すると、

明るい少年の声が突然響いた。

「お互い紹介が終って、もう俺たち出てもいいよなっ。」

聞き覚えのある声の方を向くと、黄金聖闘士達の後ろからかき分けるように少年4人が姿を現した。

「っ、星矢! 瞬! 氷河! 紫龍!」

さん、ようこそ聖域へ。なんちゃって。」

「あなた達っ、いつのまに!」

「驚いた、さん? 僕達最初からあそこのテーブルの下に隠れていたんだ。」

「え?! そうなの!」

さんが日本を経った後に暫くして俺達もギリシャに向かったんですよ。」

「じゃあ、今まで何処にいたの。此処?」

「いえ、アテネ市内のホテルです。」

「なんでまたホテルに。」

星矢、瞬、氷河、紫龍の説明を聞き終えると、ある事に気が付いて、沙織を見た。

「スペシャルゲストって、もしかして・・・!」

沙織はニッコリ笑うと、私の考えた通りの返事が返って来た。

「はい、彼らです。」

表には出さないようにしたが、私のテンションが一気に冷めるのを、しっかり感じとったらしい。星矢がツッコミを入れてきた。

さんてば、それはないんじゃない。」

「いや、だって。」

「しょうがありませんわ。さんを聖域に招くのを提案したのは星矢達ですから。」

「提案? 沙織が私に手紙を送ったからじゃないの?」

「あれは単なる口実です。」

と、沙織が言えば。

「そうなんです。沙織さんや僕達の話に、よくさんが登場してたから、どういう関係なんだ、ていうのがきっかけだったんですよ。」

瞬が補足してくれた。

星矢も話しに加わる。

「話を聴くより、直接会ったほうが良く分かるだろう、って俺が言ったんだ。そうしたら、こういう事になったって訳。」

きっかけを作った俺たちだからスペシャルゲストなんだ、と星矢が得意そうに言う。

「一輝は? と、誘って来るような性格じゃなかったね。」

「ええ。兄さんにも声を掛けたけど、やっぱり嫌がられてね。」

嫌がるだなんて、一匹狼っていうより、まるで子供だわ。

沙織が寂しいっていうのは私を此処に連れて来るための口実で、本当の目的はこの人達に私を会わせるためだったのね。

考えを整理し、黄金聖闘士達の方を見ると、誰も何も言わず、今までのやり取りを見ていた。

はっと、そこで気付いた。

「すみませんっ。ついいつもの調子で喋ってしまって、皆さんの事、無視するみたいに。申し訳ありません。」

思いっきり頭を下げたに、アイオロスが助け舟を出した。

「いやいや、気にしないでくれ。むしろ今のやり取りで、日本での星矢達と君の関係が垣間見えたようなものだ。」

「アイオロスの言う通りですよ。あなたのような方がアテナのお近くに居て、安心しました。」

ムウの言葉に頷く者もいれば、微笑する者もいる。

と星矢達の遠慮のない応酬に、普段の関係を容易に想像でき、僅かにあったへの「部外者」という認識が、各自徐々に薄らいでいった。










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何ということはない話の筋ですが、黄金の顔と名前を知っておかないと後々の展開がスムーズにいかないかもと思ったので、黄金全員と顔合わせです。何かの時には彼らに助けて頂きましょう。
決して逆ハーではありませんよ。相手はミロです。ミ・ロ