ライトな二人ー10−







「聖戦後、一同に皆さんが顔をあわせるのは初めての事です。先程も言いましたが、緊急事態ではありませんので、寛いで下さいね。」

見ると、部屋の中央にあるテーブルにはグラスと飲み物が置いてある。

・・・聖戦後、かぁ。

沙織の言葉にそれぞれが動き出し、にわかに部屋の中がざわめき出す。

何とはなしに皆の動きを目で追いながら、考えがよぎる。



黄金聖闘士は聖戦で一度死んでるって言ってたっけ。

死んでもう一度生き返るってどんな気持ちかしら。



生き返ったのは何のため?

聖闘士の使命? 

誰のため?

アテナである沙織のため? 

仲間のため?



「ぅわっ!?」

いきなり頬に冷たさを感じて、思わず声を出してしまった。

私の声で何人かがこちらに目を向けるのが分かった。

「何難しい顔してるんだ?」

顔を上げるとすぐ近くに目付きの鋭い容貌を持つ者が立っていた。

目付きは鋭いが、口元が笑っているためか怖いとは思わなかった。

「ほらよ。」

差し出されたのは私の頬に押し付けたグラスだ。

「ありがとう、デスマスク。」

お礼を言ってグラスを受け取る。名前を言われたデスマスクは、「へぇ〜。」と目を細めて私を見る。

「もう顔と名前を覚えたのか。」

「うん。名前は既に知ってたから。覚えるのは得意なんだ。」

にこっと笑いかける。心の中で、皆、類を見ない美形だし覚えやすかったの、と呟きながら。

いきなりデスマスクが肩を引き寄せてきた。

は?と驚いて非難を込めた視線をデスマスクに向けたが、本人はお構い無しに話してきた。

「秘書っていうから、てっきり厚化粧のイケイケ姉ちゃんと思っていたんだが全然違うな。」

「それ、ミロにも言われたわ。ちょっと・・・。」

さっきより近づくデスマスクの顔に体を反らして抵抗するが、反らした分だけ近づいてくる。

二人の様子を見ていた周りもデスマスクの行動に待ったをかけた方がいいと思い始めた頃、沙織がサガに目配せをした。
それを受けてサガが止めようと二人の間に入ろうとした。

しかし、サガが止めるより早く、ミロが動いた。

「その位にしておけ、デスマスク。」

デスマスクの肩を掴み、から引き離す。

ーーーミローーー

「それ以上の悪ふざけは神の怒りを受けるぞ。」

神の怒りと聞いて沙織の方を向くと明らかに怒っている様子だ。

(何するつもりですのっ。)

といったところか。一応主であるアテナの不興を買おうとは思えず、デスマスクはの肩に置いてあった手を離した。

「悪かったな。俺流のスキンシップだったんだがよ、アテナはお気に召さなかったようだぜ。」

悪びれた様子もなく、カラカラと笑うデスマスクに怒る気も失せてきた。

「気にするなよ。デスマスク流のスキンシップっていうのは本当だからな。」

アイオロスが気遣うように言ってくれる。

「昨日話していた要注意人物はデスマスクの事ね。」

「そうだ。口も態度も悪い奴だが、認めた相手にはそれなりの節度を持って接するんだ。」

「・・・微妙な評価だこと・・。」

見た感じ悪人で、アイオロスの言い分もあまり良い事は言われていないが、言ったアイオロスからはデスマスクに対して嫌悪は感じられない。

「デスマスクには此処に来る前に忠告したのだがな。」

っっどきっ!

昨日と同じくミロが傍にいると心臓がどきどきする!



・・だって・・・。

ミロの声だけ良く聞こえる。

ミロだけ他の黄金聖闘士とは違って見える。

・・どうしちゃったんだろう、私・・・。

「平気よ。昨日アイオロスからも要注意人物がいるって聞いていたから。」

少し声が震えているかもしれない。ぎこちない笑顔をミロに向けるが今はこれが精一杯だ。



「しかし、普段あまり感情を表にお出しにならないアテナがあれ程感情を顕わにするとは、という女性を余程気に入っているようだ。」

シャカが傍に居た瞬に声を掛けた。

「気に入ってるとは少し違うと思うな。沙織さんはさんもことをお姉さんのように慕っているんだよ。」

「それを言うなら先程の様子から君達も随分とのことを慕っている様に見えるが。」

「そうだね。僕達もさんの事はお姉さんのように思ってるよ。まあ、実際僕達とさんは従姉弟だから血の繋がりはあるけどね。」

「・・・なにっ。」

珍しくシャカの荒げた声が聞こえ、何事かとシャカと瞬に視線が集まる。

「どうしたのだシャカ。珍しいな。」

アルデバランがシャカに尋ねる。

「いや、今瞬からと青銅達が従姉弟と聞いて少々驚いたのだ。」

それを聞いた他の面々も驚いた顔をして私と星矢達を交互に見ている。

「本当なのですか。アテナ。」

「本当ですよ、シオン。星矢達が異母兄弟なのは知っていると思いますが。」

沙織の言葉に皆が頷いている。

「星矢達の父親・城戸光政であるおじい様と、さんのお父様は兄弟なのです。」

「実はさ、俺達もそれを知ったのは最近なんだぜ。」

「うん、よくお屋敷でさんを見かけてたけどね。まさか従姉弟だとは思わなかったよ。」

「お屋敷には沙織と遊ぶためによく出入りしていたわね。でも、私は君達のことは城戸のおじ様から聞いていたから従姉弟だって知っていたわよ。」

「・・そうか。君が、小さい頃から知っていると言ったのは、そういう訳だったのだな。」

ミロは空港へ向かう車の中での会話を思い出した。

「うん。そういう訳だったの。」

あ〜、やっぱりミロだとうまく話せないっ。

「『そういう訳』ってどういう訳だよ。二人にしか分からない会話しやがって。怪しいぜ、お前ら。」

デスマスクが何とも意地の悪い笑みを浮かべながらからかう。

ミロが怒気を含んだ声を放つ。

「・・・デスマスク、貴様はまたそんな事をっ・・。」

「えっ、え。」

私はというと、突然デスマスクがミロと私をからかうような事を言ったのですごく動揺している。

どうしてそんな事言うの? 言われるような事した?

意味が分からず目をパチパチしていると、

「デスマスク、さんが困っているでしょう。」

成り行きを見守っていた沙織の介入に、私はほぉと溜め息を洩らした。

グッドタイミングっ!沙織。

「仲が良いのは良いことではありませんか。私としては、さんと皆さんには仲良くなって頂きたいですわ。その度にからかっていては、キリがありませんよ、デスマスク。」

にっこり笑顔でデスマスクを黙らせるとミロに振り向き、

「そうですわよね。ミロ。」

「はぁ、そうです・・・。」

ミロも主君である沙織に言われては頷くしか出来ないでいた。

「そうだぜ、デスマスク。あまりさんを困らせない方が身のためだと思うな。その内逆上して平手・膝蹴り・アッパーの連続技を食らうぜ。」

「っなっ!!」

星矢のもの言いに私の声があがる。

「あれは効いたよなぁ、紫龍。」

「いや、同意を求められても、いつも食らっているのはおまえだけだろう。」

「紫龍!同調しないの。そんな昔の話、しかも連続技って何よ!平手だけでしょう!」

「忠告サンキュウ、星矢。連続技には気をつけるわ。」

デスマスクが真面目な声色で話にノッてきた!

「デスマスクも真に受けないでっ。」

「そこまで!」

沙織とは違う、威厳のある声が響いた。

「・・・教皇。」

「その話はここでお終いだ。さもないと・・・。」

もしかして、あまりに馬鹿な言い合いでシオンを怒らせちゃった?

急に不安な気持ちになった。

だが、シオンは真面目に作っていた表情から一変して笑顔になった。

「いい加減が怒って連続技が飛び出すぞ。」

目がテン。

てっきり注意をされると思ったのに。私はがっくりと項垂れた。

「・・・教皇まで・・・。」

途端に起こる笑いの声。黄金聖闘士たちは声を抑えて笑っているが、星矢はお腹を抱えて爆笑している。

沙織もくすくす笑っているが顔は紅潮して薄っすらと涙が滲んでいる。

「シオン、あなたもその様な冗談が言えるのですね。」

自分の師の意外な一面を見て、ムウは驚きながらも笑いを堪える事が出来ないで笑っている。

「もうっ・・・。」

皆、そんなに笑う事ないでしょう、と思う反面、教皇が冗談を言ったのだから仕方ないか、とも思う。

私の呟きが聞こえたのか、ミロが声を掛けてきた。

に笑っているわけではないからな。あの教皇が言ったから可笑しいんだぞ。」

「・・・分かってる。」

微笑んでいるミロは見たことはあるが、可笑しくて笑っている顔を始めて見た。

少年のような笑顔で、いつまでも見続けたい笑顔だ。

やっぱり素敵だよ、ミロ。



皆で笑い合えるなんて、悪いことじゃないよね。

星矢の言った一言のおかげかな。

星矢、ありがとう。











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ようやくヒロインがミロへの思いに気が付きました。ここまでわたしのパソコンを打つ手が重かったけど、段々と私の書きたい方向に進んでいってるので打ち込みも速くなるかな(^^)v
文章読んでて、表現おかしいとか、テンポが変などあると思います(それはいつもの事・汗)読み返して直してはいるんですが、書いた本人の方が分からない事があると思いますので。う〜、もし変と思っても、それは今の私の精一杯の表現ですので笑って見過ごして下さい(所詮言い訳)。