ライトな二人ー8−







執務室を出た後も、夕食まで沙織と一緒にいたが、飛行機での長期フライトと十二宮を上ってきて疲れただろうと、夕食後は部屋で休ませてくれた。

に用意された部屋は、沙織のいるアテナ神殿に通じる扉に一番近かった。

椅子に寛ぎながら、今日の事を思い出してみる。

沙織達から聖域の事を聞いて自分の中でこんな所かな、と想像はしていたが、実際その場所に立ってみると、話からでは分からない風土を感じた。

沙織が座するアテナ神殿を守るように配置されている十二宮が、聖域の歴史が常に戦いの歴史であるという事だとは思う。

星の運命のもとに行って来ます、とギリシャへ沙織と星矢達が行ってから数ヶ月が経った。

その間、世界は異常気象があり、星矢達は瀕死の大怪我を負い、過酷な戦いがあった事がにも分かった。

星矢達を気遣う沙織を見ていられず、何と声をかければいいか分からない時もあった。

何も出来ない自分が悔しくて。

2度と沙織が「アテナ」として、星矢達が「聖闘士」として戦って欲しくないと思う。

この聖域に来てますますそう願う。

そこまで考えて、思考が暗くなっている事に気付き、勢い良く頭を振った。

「やめやめっ! 気分が暗くなってきた!」

こんなんじゃ、逆に沙織に気を使わせちゃうわ。それに、もう大きな戦いは起こらないだろうって言ってたし。

は今日会った黄金聖闘士達を思い出した。

「皆優しそうだったな。なんていうか、悪い意味での世間に染まっていないっていうか。」

う〜ん、と自分しかいない部屋で1人考え込む。

精神が澄んでるっていうのかな。きっと星矢達と同じで厳しい訓練をして聖闘士になったと思うし、澄んでるっていうより、強いのね。

精神の強さがそのまま全身に現れてるんだ。きっと。

それぞれの顔を浮かべながら、うんうんと頷く。

ミロの顔を浮かべた途端、思考がストップした。ついでに鼓動も速くなってくる。

「・・・確かに、かっこ・・いいよね・・。」

ミロを思い浮かべながら、暫くの間椅子に座り続けてしまった。

・・・・・カチ、カチ、カチ。

ふと、時計の針の音が大きく感じられ、は静かに我に返った。

「さてっ。寝るか!」

1人で寝るには広すぎると思われるベッドに勢い良く潜り込むと、あっという間に眠りの世界へ意識を飛ばした。



翌日、各地に散っていた黄金聖闘士達が聖域に到着した。

まだ召集時間まで時間があるため、各それぞれ自由に過ごしているが、自然と天蠍宮に人が集中していた。

昨日、日本から来た、アテナと親しいという女性について聞くためだ。

ちなみにここに居ないのは、シオン、アイオロス、童虎、サガ、カノンの年長組だ。さすが落ち着いているというか、浮き足立っていない。

逆にシャカ、カミュ、シュラの3人はその場のノリで引っ張ってこられたため、なんで自分までここに居なくてはいけない、という表情を出していたが、他の面々はそんな事は気にしていない。

次々と天蠍宮に集まってくる同僚達に、何故ここに集まる?とミロが聞くと、ミロが一番その女性・と長い時間一緒にいたからだ、と答えられた。

「まあ、そうだな。」

「しかしよ、ミロ。」

デスマスクが妙な含み笑いをうかべながらミロに質問した。

「日本からずっとほぼ二人きりだったんだろ? 何もなかったのかよ。」

おそらくデスマスクしかしないであろう質問に、周囲から、その性格なんとかしろ、という溜め息が漏れた。

しかし、質問をぶつけられた当人は方眉を上げて、明らかに不快感を表現した。

「あるわけなかろう、おまえじゃあるまいし!おまえは、俺が初対面の女性に手を出すように見えるのか! 一緒にするなっ!」

ミロは怒り心頭で怒鳴るが、デスマスクにしてみればこういう反応も楽しむためにからかっているだけなのだが、ミロにしてみれば黙っているわけにはいかない。

「なんだよ。あまり美人じゃなかったってことか。」

小さく笑いながら、尚もミロに聞く。

「知るかっ。自分で確かめろ!」

もうミロからは聞き出せないと判断したデスマスクは、ムウ、アルデバラン、アイオリアに向き直すと、どうだった?と聞く。

「そんな事ないぞ。むしろ美人だと思うが。」

と、アルデバラン。

「私もそう思いますよ。」

ムウも同意。

「デスマスク。その調子でに絡むなよ。」

アイオリアが忠告を促す。アイオロスと同じ危惧をアイオリアも抱いていた。

「そうですね。きっと、アテナが黙っていないですよ。大人しくしていた方が身のためですよ。」

アテナの名が出て何人かが顔をムウに向ける。その中の1人、シュラが口を開いた。

「何故だ? ムウ」

「すごく仲が良いのだ。まるで姉妹のようだったぞ。あの様子では、もし彼女に何かしようものならアテナ直々の制裁がくるな。」

デスマスクを見ながらミロが説明する。その目にはむしろ、制裁を受けろ!という強さが宿っていた。

「そんなに仲がよろしいのか。」

「どのような女性か気にはなって来たな。」

シュラ、カミュが言うと、シャカがカミュに振り向いた。

「氷河からは聞いていないのかね。」

「いや、氷河からは何も聞いていない。名前も聞いた事もないから、本当に今日初めて会うのだ。」

あの氷河なら、師カミュに何でも話していそうなため、これは以外だった。

ちょうど全員が話しに入れた所で、時間が近づいてきた事が分かり、教皇宮に向かい始める。

ミロはまだ怒りが納まらないのか、デスマスクを時々睨んでいた。

デスマスクはこれといって気にした様子もなく、何時までも根に持つなよな、と肩を竦ませた。





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やっぱりヒロイン、ミロを意識してますね。ミロ夢なんだから当たり前なんですが、まだ
はっきりとは自覚してません。私はそのつもりで書いてます。(たとえそう見えなくとも!)
考えを切り替えてすぐ眠れるのは、まだ恋と自覚してないからなんですね。