ライトな二人ー7− 影が伸び、空は茜色に染まっていた。 もう、下の方に位置する十二宮は見えなくなり、随分上まで上がって来たのだと思う。 と沙織は教皇宮に入っていく。 「ねえ、沙織。聖域って、聖闘士しかいないの?」 「そんな事はありません。聖域全体を取り仕切るのは教皇ですけど、一人ではさすがに無理です。聖闘士達を武官とするなら、文官に位置する人達もいますし、あとは私の身の回りをお世話して下さる女性が数人や、他にもいますよ。」 「そうよね。世界中に聖闘士が散らばっているなら、そういう命令・指揮系統もしっかりしてないとスムーズにいかないわよね。」 どんどん中へ入っていくと、内装が少しずつ変わってきた。入り口は下の十二宮と同じ石の壁が剥き出しだったが、次第にレリーフが形どられた扉や、廊下には絨毯が敷かれ中世のお城の中を連想させた。 (あらら、さすが聖域の中枢ね。中は豪華だわ。) 沙織が一つの扉の前に止まる。 「ここが執務室になっています。主に教皇の仕事場ですね。今はシオン、サガ、アイオロスが中にいます。」 言葉を切り、沙織が開けるより前に、扉が開いた。 「「!」」 「アテナ、お待ちしておりました。」 「アイオロスっ。びっくりしましたわ。」 「それは失礼しました。しかし、丁度良いタイミングだったでしょう?」 そう言ったアイオロスは実に爽やかに笑った。 (うん。やっぱりアイオリアに似てる。) 「アテナ自らのご案内お疲れ様です。さあ、中へお入り下さい。」 サガに促され、沙織と私は中へと入った。 「疲れるだなんて、そんな事ありません。さんをエスコート出来て嬉しいのですよ。」 「沙織・・。」 素直な沙織の言葉に私はなんとなく気恥ずかしさを感じる。二人の時や、周りに人が居ても、それは辰巳さんや星矢、瞬、氷河などの場合は平気なのだが。 しかし今傍に居る人達は、今会ったばかりなため、沙織との普段の友人関係の姿を見られるのは何やら抵抗があった。 それよりも沙織とこの人達って、組織でいうなら上司と部下の関係でしょう? その部下の前でそんな無防備な態度でいいの? 財団内ではいつも厳しい態度を崩さないのに。 などと考えながら、サガ(アイオロスがこの人で、シオンはさっき会って顔を知ってるから、残ってるこの人がサガよね)がこちらに歩いて来るのを見ていた。 サガが何か言う前にが言葉を発した。 「はじめまして。サガさんとアイオロスさんですね。沙織から聞いています。私はです。どの位かは分かりませんが、しばらくご厄介になります。」 サガとアイオロスを交互に見ながら挨拶をする。 先に挨拶をされ先手を打たれたサガだが、真っ直ぐにこちらを見て話すにサガはむろん、アイオロスも好感を持った。 「こちらこそ。慣れない場所で大変だろうが、遠慮なく言って欲しい。それと、私たちの事は呼び捨てで構わない。良いな、アイオロス。」 「ああ、勿論だ。君はアテナのご友人なのだから、我々に気を使う必要は無いぞ。」 「二人の言うとおりだ。私の事もシオンでよい。」 「そうですか。そうおっしゃるなら、お言葉に甘えさせて頂きますね。」 "アテナのご友人"か。そういえば下でも沙織がシオンに私の事、お願いしますって言ってたっけ。やっぱり聖闘士は沙織には絶対なんだ。 主従関係は意外にはっきりしてるのね。 「さん。お部屋に案内しますね。シオン達も、まださんと話したいでしょうけど、さん疲れてるでしょうから。また明日に。」 「そうですな。、長旅で疲れたであろう。ゆっくり休んで疲れを取るのだぞ。」 「ありがとう、シオン」 「しかし、明日の方が今日より疲れるんじゃないのか。」 「え?」 どういう事? アイオロスの言葉に沙織も、サガ、シオンも何故?という顔をしている。 「が今日会った黄金聖闘士は、幸いにも皆人当たり良い者達ばかりだ。そうだっただろう?。」 確かに。ここの3人を含めて、物腰の穏やかな人達ばかりだと思う。私は頷いた。 「黄金聖闘士は個性的な奴が多いからな。」 ここまで言って、アイオロスが何を言いたいのか、 「納得しましたわ。」 「特にあいつは要注意だ。」 「鋭いな、アイオロス。」 沙織、シオン、サガはそれぞれ理解した。 「え? え? 要注意人物がいるの?3人で納得してないで説明してよ。沙織?」 「心配しないで下さい。さんは私が守ります!」 説明になってないわよ。 「会えばどんな奴らか分かるさ。自分の信念を曲げないというか、自己主張がはっきりしてるというか。」 ますます困惑顔を表すだった。 「さん、本当に大丈夫ですよ。仮にも平和を愛するアテナの聖闘士なのですから、やましい事などしません。」 仮にもって、やましい事って。 でもこの沙織の言葉でなんとなく、何が要注意なのかが想像できた。 「うん、分かった。もしもの時は助けてね。沙織。」 「もちろんですっ!」 自分で振った話だが、アテナにここまで力一杯納得される同僚に僅かな同情がわいてきたアイオロスだった。 「じゃあ行きましょう。さんのお部屋は私の部屋の近くですよ。でわ失礼しますね。」 沙織は私の腕を取ると奥へ続く扉へと歩き出した。 シオン、サガ、アイオロスがそれぞれ一礼をして沙織と私を見送る。 「明日もよろしくお願いします。」 私も3人に挨拶をして沙織に引かれるままに扉へ歩いた。 Next メニュー |