ライトな二人−4−




窓の下に古代ローマを思わせる闘技場が見えてきた。

「あそこの闘技場に着陸するぞ。」

ミロの言葉に耳を傾けながら、近づいてくる闘技場を見つめていると、3人の人影が確認出来る。

聖闘士かな、と凝視すると、その内の一人は良く知っている女の子で、あとの2人は若い男性と小さな男の子だった。

「あ、沙織だ。」

の言葉にミロが素早く反応した。

「なにっ!」

ミロも窓に寄ると下を確認する。

「教皇も一緒ではないか。」

横でミロの焦ったような呆れたような表情を見ながら以前受けた説明を思い出す。

(「教皇」て聖闘士で一番偉い人じゃなかったっけ。じゃあ、あの人が教皇シオンだ。)

無事に着陸し、タラップを降りようとすると、沙織がタラップを駆け上がって来そうな勢いで走っている。後ろでシオンが慌てて、アテナ!と呼んでいた。

「ああ、沙織!そんなドレスで走ったらころぶでしょっ。今降りるから待ってて!」

も慌てて沙織を制しながらタラップを小走りに降りていく。

さんっ!」

降りると沙織が飛びつかん勢いで抱きついて来た。

「こらこら沙織、こういう事は人前では控えた方がいいって前からいってるでしょう。」

慕ってくれるのはとても嬉しいが、前には教皇シオンが沙織の抱きつき攻撃に驚いているのが見える。、後ろにはミロもいるが教皇が驚いているのなら、おそらくミロもそうだろう。実際ミロも、普段見た事がないアテナの喜びように驚いていた。

「教皇が驚いてるわよ。」

「ふふっ、さんが本当に聖域に来てくれて嬉しいんですもの。長旅お疲れ様でした。ミロも。突然の日本行きで疲れたでしょう。お疲れ様です。」

軽く頭を下げると、
「勿体ないお言葉です。アテナ。」

沙織に向けられるミロの眼差しが凛々しくて、は我知らずどきどきしていた。

「黄金聖闘士も一緒にさんをお迎えするはずだったですけど、私が心おきなくさんと久しぶりの再会を楽しみたいと言って黄金聖闘士の皆さんにはご遠慮して頂きました。」

(心おきなく、というのが先程の抱きつき攻撃という訳か。)

、ミロ、シオンの3人は納得した。

さん、もう知っていると思いますが、こちらが教皇のシオンです。シオン、さんです。私の大切な方ですので、よろしくお願いします。」

沙織がそれぞれ紹介をしている間、はシオンを失礼にならない程度に見ていた。

(かっこいいわ・・・)

「心得ております、アテナ。」

に視線を向ける。

「ようこそ聖域へ。歓迎しますぞ。殿。」

とても穏やかな口調であったが、"殿"と呼ばれぎょっとした。

「こちらこそお世話になります。あの、お願いがあるんですが。」

「願い? ほぉ、早速何であろうか。」

シオンは会って間もない自分に向けられる願いとやらに興味津々といった感じであるが、ミロには何となくどういった願いかが想像が出来て、顔を綻ばせた。

「私の事は敬称を付けなくてかまいませんので、普通でいいです。」

いやにきっぱりと言われ、シオンは沙織を見た。

沙織は同意の意味を込めて、にっこりと頷いた。

それを受けて
「分かった。。皆にもその事を伝えておこう。」

は心底安心しようで、笑顔でお礼を言った。

「おかしな事を願うな。そんなに嫌なのか。」

「教皇。私も聖域に向かう途中にから言われました。""と呼んで欲しいと。」

「昔からさんてそうなんですよ。それがさんの良い所なんです。」

沙織が姉を自慢するように満面の笑みで二人の言葉を受ける。

「では行きましょう。貴鬼、さんの荷物をお部屋までお願いします。」

沙織に言われて、貴鬼と呼ばれた少年は初めて喋った。

「はいっ、沙織さん。」

「ええっ、荷物結構重いわよ。この子に運ばせるなら自分で運ぶわよ、沙織。」

「大丈夫だよ、お姉ちゃん。おいら、平気だから。」

貴鬼はミロから荷物を受け取ると、そのまま浮かせてしまった。

びっくりしたのはだけで、他の者はとりだでて慌てていない。

「先に行ってまーす!」

元気よく駆け出していく貴鬼の後姿を呆然と見送ってしまった。

「今のって・・・」

「貴鬼はテレキネシスが使えるんですよ。さんに手紙を飛ばしたムウの弟子なんです。」

「はぁ、あんな小さな子がねえ。」

「我々も行くとしましょうか。」

シオンに促されて4人は十二宮に歩き出した。




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