ライトな二人ー33ー












を送り届けた後、ミロは城戸邸のある一室に居た。

もちろん、アテナである沙織に挨拶をしてからだ。

部屋にはミロとカミュの二人。テーブルを挟んで向かい合っている。



「ちょっといいか?」と突然現れたミロに少し驚いたが、とりあえず座るよう促した。

いきなり来たわりには、ミロからなかなか切り出さなかった。

てっきり矢継ぎ早に言ってくると思っていたカミュはミロの様子をじっと伺ってしまった。



「いやな・・・。」

ミロ自身も勢いでカミュの元に来てしまったが、どう切り出して良いのか分からず言葉を濁している。



歯切れの悪いミロにカミュは興味深そうな視線を送る。

(あのミロがこうもはっきりしないとは。人とは何が切っ掛けで変わるのか分からんな。)



「何を笑っている、カミュ。」

「珍しいおまえが見られて思わずな。」

「何が思わずだ、人が困っているというのに。」

「突然来ておいてその言い草は何だ。」

「う・・・それを言われると何も言えないが、だがな。俺も悪いと思ってこうして酒を持参して来たんだぞ。」

ミロはテーブルにあるモノを指さした。それは既に開けられ、グラスに注がれている。

「うむ。美味しく頂いているぞ、ミロ。」

カミュの冷静な切り返しに、面白くなさそうにミロも酒を呷る。



闘い以外では割と冷静なミロが、何かはっきりしないものを抱えて不安定になっているらしい。

カミュにはそう映った。

「分かっている。で、話してみろ。」

グラスに口をつけながらミロを促す。

(まあ、大体の予想はついているが。)

「ああ・・・・、の事でな。」

ミロは手に持っているグラスに目を伏せながら話し始めた。



やはりな。と胸中でカミュは呟いた。

それから数秒、二人の間には再び沈黙が流れるがミロを急かす事はせず待つ事にした。



がな、任務に行く俺に向かって"気をつけて"と言ったんだ。日本に戻ってきてに会ったら今度は"お帰りなさい"と言ったんだ。」

そこで一旦言葉を切ると、ふうっと息を吐いた。

「俺はどうすればいいと思う?カミュ。」

「・・・・・。」

「・・・・・。」

「ミロ。今ので私に何を求めてるのかさっぱり分からんぞ。」

「何っ?!!」

セリフと同時にカミュに向かって身を乗り出す。

「何故だ!俺がこんなにも悩んでいるというのに!!」

「そこで怒られても本当に何て言っていいのか・・・。」

(しかし、そんなに悩む事か?)



はお前を心配して言った事なのだろう?素直に受け止めればいいではないか。」

身を乗り出していたミロはまた椅子に座り直すと難しい顔をしている。

「それが出来ればわざわざお前に言いに来などしない。」

「出来ないとは?」

「当然、非常に嬉しいのだが、なんだ・・・その、あまり慣れていないためか、とどう接していいのか戸惑うのだ。」

「そんなもの、今まで通りで良いと思うが。」

「・・・・・あっさり言うな。」

ミロの言い草にカミュは溜め息をつくと同時に苦笑した。

「どう言えばお前が納得するのかが分からないし、何を言ってもお前の欲しい答えなど私には答えられそうもない。」

「カミュ。」

「他人の恋愛に首を突っ込むほど私だって経験がある訳ではない。こういう事はデスマスクあたりが一番だと思うが。」

「あんなのに話したら玩具にされるだけだ。」

間髪入れずのミロに、カミュは以前の天蠍宮でのちょっとした騒ぎを思い出した。

あのデスマスクの事だから、今のミロとの関係を既に気付いているのかもしれない。


またも苦笑がもれる。



「まあ、ミロ。お前達は60億分の1の奇跡の出会いを果たしたのだから、その思いを大切にしろ。私が言える事はこれ位だ。」

「・・・60億分の1の出会いか・・・。」

カミュの言葉を繰り返す。


日本出身とギリシャ出身の俺たち。

何の接点もなく、本来ならお互いの存在を知らずに一生を終えるのが本当のところだろう。



しかし、俺達は出会った。

俺はを好きになり、も俺を好きだと言ってくれた。


「そうだな。よくよく考えればすごい確立で出会ったのだな。」

ひとり言の様に呟くミロはどこか吹っ切れたような顔をしている。

「悪かったな、カミュ。突然話を持ち込んで驚いただろう?」

「そんな事はないが。」

「お前も悩む事があったら俺に遠慮なく言ってこい。」

にやりと、いつもの調子でミロが言った。



残りの酒がなくなるまで、ミロとカミュの他愛ない話は続いた。






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ミロの相談相手となるといつもカミュが浮かびます。ミロが他キャラに相談するってあまり想像出来ないや。
ああ、でも。こうやってミロとカミュが自分について話してくれてたりしたら、もう!もう!キャ〜〜(>▽<)!!!・・・楽しい。