ライトな二人ー31ー











ミロの背中を見送って私も自分の部署へ戻る途中、自然に顔が緩んでしまう。

だめだめ!ミロはこれから危険と隣り合わせかもしれない任務に行くんだから!浮かれちゃだめでしょう!


戻ってきたの顔は傍から見てもとても嬉しそうな顔をしていた。
時々その顔がにやける事があり、その度に近くに座っている同僚達から注目を浴びていただった。





お昼休みに自動販売機で飲み物を買っているとシュラとカミュに会った。

「今休憩か?」

「うん。シュラとカミュも?」

「そういう訳ではないが、丁度時間が空いたんだ。」

「そうなんだ。」

「ところで。」

普段表情の変化の少ないカミュが今は笑っているように見えた。

「良かったな。」

「え?」

カミュの言っている意味が分からずキョトンとしてしまった。

「ミロの様子が嬉しそうだったから何があったかはすぐに分かった。」

「え・・・。」

カミュの"良かった"の意味が分かって急にの頬が染まってきた。



それに

---ミロの様子が嬉しそう---


思い出しては緩んでしまう顔を気を引き締めていたにも関らず、これにはあっ気なく顔が緩んでしまった。

(ミロも嬉しかったんだ。ふふふ。何だか嬉しい。ふふっ、えへえへ、へへへ。)

「えへへへ〜〜。」

「不気味笑いはやめろ、。」

思いっきり不審者を見るような目でシュラはを見た。

「っえ!!」

シュラに言われてハッと我に返る。

「口に出して笑ってた?!私っ!」

「「ああ。」」

きれいに揃った二人の声に恥ずかしさで一杯になる。

の様子が可笑しくて、カミュから苦笑がもれた。

「まあ、嬉しいのは伝わってくるが、人前では気をつけるのだぞ。」

「うっ、はい。」

「ミロをよろしく頼む。」

「・・・・。」

一瞬は言葉につまり目を瞬かせてカミュを見た。

「なんだその間は。」

さっきの嬉しそうなの様子だとすぐに反応が返ってくると思っていたため、シュラは拍子抜けしたように聞いてきた。

「あの、よろしくって・・・・・?」

「そのままの意味だが?お互いの気持ちが分かってミロとつき合う事になったのだろう??」

見れば、は考え込んでいるようだ。


「分からない。」

ポツリと


「何?」

「私はミロが好きで、ミロも好きだと言ってくれたけど。ミロとつき合う事になったかは・・・分からない。」

シュラとカミュは顔を見合わせて、を見るとシュラが一言。

「本気で言っているのか?」

が頷く。

「任務でギリシャに行かなくちゃならないみたいだから、すぐに行ってしまったの。」



そういえば、

・・・近い内にまた会おう。会っていろいろ話したい・・・

て、言っただけだったような。

全然気にならなかったけど、はっきりとつき合い宣言をされた訳でもなく、した覚 えもない。



「意外だな。」

肩を竦めながらシュラが言った。


「意外って?何が、シュラ。」

「いや、ミロの事だから、キスして押し倒すぐらいのことはしてギリシャに向かって行きそうだと思ったのだ。」

シュラのあまりな言いようには真っ赤になって口をパクパクさせている。

「それは相手によるだろう。本気で思っている相手にいきなりそんな事はしないと思うが。」

シュラとカミュ。双方とも普段から表情があまり変わらないため、普通ならにやりとしそうな会話にも表情崩さず話している。

それが返って、余計に恥ずかしさをは感じていた。

「もう二人とも!何てこと言ってるのよっ!!」

ここを何処だと思ってるの!
たまらず大きな声を出して二人の会話に割って入り終わらせようとした。

この場所に飲み物を求めて3人以外にもまばらに人がいる。
総帥付き秘書と総帥付きボディーガードがする会話ではない。

「すまんな、。しかしせっかくと思いが通じたのだから、ミロもこのままではいないと思うがな。」


は少し考える風な仕草をして。

「でもカミュ。私は必ずしも付き合おうとは思ってないよ。そういうの押し付けたくないし。」

シュラとカミュはまた顔を見合わせた。

「ミロも私と同じ気持ちな事が分かっただけでもすごい嬉しいから。」



がそう言うのなら私は何も言えないが。」

「ありがとう、カミュ。」

シュラがちらっとある方向に注意を向けると、カミュに促した。

「カミュ、そろそろ行くぞ。」

「ああ。ではな、。」

シュラも片手を上げて去って行く。



シュラとカミュの背中を見ながらふと思う。

(今朝もミロの背中を見送ったな・・・。見送るだけっていうのも何だか寂しいかも。)

任務に赴くミロも、アテナである沙織を護るために向かうシュラとカミュの背中には私の入り込めない力強さを感じる。

一緒にあの背中と並んでみたいが、何の取り得もない私が果たして自分がその後ろを追いかけても良いのかとさえ思う。

こんな消極的な考えを持つ私をミロが好きだなんて・・・。


「ちょっと自信がなくなってきた。」


廊下を歩いている中、そんな考えが浮かんでくる。

朝はミロから突然言われて、私のどんな所を好きになってくれたのかなんて思わなかったけど、時間が経ってきたら段々不安になってきた。

(私、かなり舞い上がっていたみたい。)

でも今は・・・。



今朝会ったばかりだけど。

今度会って話そうって言ってくれたけど。



は窓から見える空を見上げながら思う。



ミロに会いたい、と。






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男の人の後姿って結構好きです(いきなり何を言うっ)。
特にスーツの後姿がね。スーツの似合う人は性別・年齢関係なく惚れ惚れしますv