ライトな二人ー21ー








黄金聖闘士に初めて会った部屋で今夜もパーティーが行われていた。

今回は前回なかったお酒があるため、飲んでいる者はかなり飲んでいた。

も弱い方ではなく、それなりに飲んでいたが、黄金聖闘士の飲みっぷりは半端じゃなかった。

最初は呆れていたが、もうそれを通り越して感嘆の思いだった。




皆のお酒の強さは分かったけど、それをしっかりとまかなう聖域の台所事情も凄いわよね。

あとからあとからお酒と料理が出てきて、よく無くならないな。







「ほらっ、もっと飲め!飲んで嫌な事は忘れちまいな。」

私のグラスにワインをどぼどぼ注ぐと無理矢理飲ませようとしてきた。

「ちょっとっ、ちょっと!自分で飲めるからいいわよ!」

デスマスクの手を払いのけると、一気に飲み干した。

私も大分前からほろ酔い気分で高揚感があり、お酒が思いのほかすすんだ。

デスマスクが飲めば私も飲み、私が飲めばデスマスクも飲む。

そうしてお酒を注ぎあっていたら、いつの間にかかなりの量を飲んでいた。

「・・・デスマスク・・・、もう・・無理。」

「なんだ、もう終わりか。俺はまだまだいけるぜ。」

「あんたはそうでしょうよ・・・。」

、平気か?」

傍にいたアイオリアが心配そうに覗き込んでくる。

「これ以上飲まなければ平気。」

喉が渇く。

お水が飲みたい。

が水を飲むのを見ると、アイオリアはがもう酒は飲まないと思って安心した。

「・・・熱い。外の空気にあたって来るね。」

水の入ったグラスも一緒に持っていくと廊下に続く扉に歩いていった。

「一緒に行くか?」

「ありがとう。でも大丈夫よ、アイオリア。」

手を振ると意外としっかりした足取りで歩いていった。



ミロの視界に部屋を出て行くの後ろ姿が映った。


・・・

デスマスクたちと飲んでいたようだが、気分が悪いのか?


の事が気になり、ミロは皆の輪からそっと抜け出した。

部屋を出て行くミロを今度はカミュの目に留まった。




廊下を歩いていると、何処からか風を感じる。

風が流れてくる方に歩くとドアが少し開かれた部屋があった。

外に出られるかと思い、その部屋の中を窺ってみると人がいる様子はなく、バルコニーの窓が開いていた。

皆がいる所からそんなに離れてはいなく、丁度いいかもと思い部屋の中にするりと入っていった。

バルコニーに出るとイス二つとテーブルが置いてあった。


お昼にお茶を飲んだらおいしそうな場所〜。


イスの一つに座ると、両手両足を大きく伸ばした。

「んんんん〜、気持ちいいっ」

夜風がやさしくの体をかすめていった。

力を抜いてイスに体を預けていると段々と眠くなってきた。

「うぅ、本当に飲み過ぎたかも。デスマスクがのせるから。」

体を起こして水を一口飲むとテーブルに突っ伏した。

そうして目を閉じているとゆるゆると眠りの世界に引き込まれていく。


眠い。

ここで眠っちゃったらまずいよね。

飲みすぎたけど、さっきは楽しかったな。

この楽しい思い出を最後に日本に戻れば、きっとミロの事は忘れられる。


それは確信に近かった。

頬を流れる風に集中しているといつしか眠りに落ちていった。



?」

バルコニーの入り口で呼んでみたが返事がない。

テーブルにうつ伏せのまま規則正しい呼吸が紡がれている。

に近づくと、もう一度呼んでみる。

、眠っているのか?」

やはり返事がない。

を抱き起こすと、そのままイスの背にもたれ掛けさせた。

じっとの顔を見つめる。

月明かりに照らされたの顔は夜風にあたっていたためか、火照りが失せ、白く浮かび上がっていた。

きれいだと思う。

そっとの頬を右手で触れてみる。

「・・・ん・・。」

自分の頬に何かが触る感じがして、は薄く目を開けた。

「・・・ミロ?」

「ああ。」

低いミロの声。

ミロがいる。

でもどうしてここに?

眠くて目を開けていられなくてまた閉じてしまう。

「明日、帰ってしまうのだな。」

ん?うん。

「もう少しにはここに居て欲しいが。」

私も居たい。

「アテナのご希望なら仕方ないか。」

そうだね。沙織の希望ならね。


返事のないは目を閉ざしたままだ。

「眠るのなら部屋に戻った方がいい。体を冷やすと日本に戻ったら風邪を引いてるぞ。部屋まで送るから。」

眠くて動けないの。

浅い眠りの中にいるはミロの声はするが、それに現実味が感じられず、夢を見ているようだった。

「また、必ず会える。」

やさしく唇に触れる感触。

「んっ。」

僅かにが身じろいだが、それ以上は動かなかった。


唇が熱い。

ミロ。

離さないで。


はそのまま今度こそ深い眠りに落ちていった。






「戻って来ないな、。」

が出て行ってからどのくらい経っただろうか。

「ちょっと見て来る。」

アイオリアが席を立つと、デスマスクが止めた。

「やめとけよ。あいつが行ったから、邪魔になるだけだぞ。」

「あいつ?」

「ミロか。」

いつの間にかカミュがアイオリアの後ろに立っていた。

「なんだよカミュ。お前も気付いていたのか。」

「ミロが部屋を出て行ったのが見えたからな。」

「そうか。ミロが付いてるのなら大丈夫だな。」

アイオリアはそう言うとまた座り直して飲み始めた。

「それで終わりかよ。」

「んっ、何がだデスマスク。」

「・・・いや、いい。」

デスマスクはここでミロとの二人をネタにして笑い飛ばしたかったが、あっさりすぎるアイオリアにそんな気分も削がれてしまった。

デスマスクも大人しく飲み始めた。

カミュはふっと笑う。

アイオリアのおかげで、友人の恋は掻き回されないで済むようだ。


主役のはいなくなってしまったが、ある者は飲みに飲みまくり、ある者は食べに食べまくり、常識ある者達を大いに呆れさせた。





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はやく続きを書きたいです。