ライトな二人ー20ー








カミュがふいに動いた。

「どうやらアテナを無事に助け出したようだ。」

「本当っ!」

「うん。こっちに向かっているみたいだから、僕達と合流しようとしてるみたい。」

「じゃあ、沙織は無事って事ねっ!」



しばらくすると沙織たちと合流出来、沙織の無事な姿を確かめるとホッした。

「良かった沙織っ。連れて行かれた時はどうなるかと思ったわよ!」

「心配かけてごめんなさい。それよりもさんっ!」

いきなり沙織に両腕をがしっと掴み、私に迫ってきた。

「どこかケガをしていませんかっ?私を助けようとして突き飛ばされたでしょう。」

「・・・ああ、その事。」

あまりに沙織が真剣だったので何事かと思った。

「大丈夫。瞬が助けてくれたから何ともないわ。」

笑顔で言うと沙織は安心したように胸を撫で下ろした。

「アテナ。」

「なんですか、カミュ。」

「ここは一度聖域に戻った方が良いかと。」

「私もカミュの意見に賛成です。我々がいるとはいえ、むざむざ御身を危険に晒す必要はありません。」

カミュとミロに言われ、沙織が私の方を向いた。

私はカミュとミロの言うとおりと言いたくて、頷く。

「・・・分かりました。皆さんにこれ以上迷惑はかけられませんわね。」

星矢に向くと。

「星矢、ごめんなさいね。お腹空いていると思いますが、聖域に着くまで我慢して下さいね。」

沙織が申し訳無さそうに星矢に言うと、星矢は「あっ」と呟く。

「忘れてたよ、沙織さん。」







聖域に着くと早速先程のことを教皇シオンに報告するために十二宮を上っていく。

報告を受けたシオンは、アテナがそんな事に巻き込まれた事に驚いていたが何時もと変わらないアテナの様子に安心したようだ。

の方もケガがなくて良かった。済まなかったな。」

気遣うシオンの言葉には頭を振った。

「いえ。沙織の事ですもの他人事ではないし、気にしないで。」

「シオン。今日の事で、私は一度日本に戻ろうと思うのですが。」

「日本にですか?アテナ。」

「ええ。」

犯人が一般人であったとはいえ、拉致されかけたばかりの為、もう暫くは聖域に滞在して欲しいのがシオンをはじめ此処にいるミロ、カミュの言い分であった。

「今回私を連れ去る事には失敗しましたが、もしかしたら財団側にも何か圧力をかけて来るかもしれないのです。」

その為にも日本に居たい。沙織の主張はには良く分かる。

「それに、アテネ市の企業だと分かっているのです。ギリシャに居るより日本に居た方がむしろ安全かもしれません。」

一度言い出したら曲げないアテナの正確を既に知っているシオンは小さく溜め息を付いた。

「・・・分かりました。」

「ごめんなさい、シオン。」

「貴女はアテナであり、城戸沙織嬢でもあるのですから致し方ないでしょう。」

シオンの許可が出た事に沙織はホッとした。

さんも一緒に帰りますからね。」

くるっと私に向き直す。

「はい、分かってます。と言っても、此処に一人残されても私は困るんだけど。」

「あら。さん、結構皆さんと打ち解けているように見えますが。」

「そう見えるのなら嬉しいわ。」



ミロと離れるのは残念だけど、正直安心しているのも事実。

またミロが沙織のために何か行動を起こすたびにもやもやした気持ちが沸き起こって来ると思うと怖かった。

沙織のことはとっても大好きなのに。

ミロだって沙織を護るための行動にそんな感情を持たれては迷惑だと思う。

ミロたち聖闘士とは沙織の護衛のためにこれから何度か会う可能性があるし、やっぱり恋愛感情なんて彼らには重荷になるかしら。

離れて冷静になれば、きっとミロへの恋心も自然消滅する。

大丈夫。

まだ好きになったばかりだもの。


俯きながらそんな事を考えて、ミロの顔が見たくて少し顔を上げてみた。


あっ。


ミロとしっかり目が合ってしまった。

慌てて目を逸らすと顔が火照ってくる。


胸がどきどきしている。


「明日帰りますので今夜は騒ぎましょう。さんも楽しんで下さいね。」

「・・・えっ。」

「もう、聞いてませんでしたね。」

沙織は怒っている様子もなくすくす笑っていた。

・・・すいません。

全く聞いてなかったため心の中で素直に謝罪した。

「明日帰るので、今夜はさんと皆さんとのお別れパーティーをしましょう。この間は初めての対面でさん緊張していたみたいですが、今なら前よりは話せると思いますので。」

「う・・ん、そうかも。」

「だから、楽しんでくださいね!」

沙織は嬉しそうにニコニコしていた。


わざわざお別れパーティーなんてしなくてもいいんだけど。

そういうの好きよね、沙織って。

でも。

シオンに今夜の準備のあれこれを話しているのを横目で見ながら、せっかくだから楽しもうと思う。

そして、ミロの事もきれいさっぱり諦めよう。








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初めて見たときにどきどきして、それが恋と分かったら吹っ切れて、諦めようと決めたらまたどきどきしてくるなんて、さん忙しいですね(笑)。