ライトな二人ー2−



初対面の人と一緒にギリシャに行く事になり、少し動揺したであったが、

これも仕事と思えば大丈夫!と、自分を勇気づけていた。

するとアパートの下から車の音が聞こえて来る。窓から覗いて見るとやはり見
慣れたリムジンが丁度止まった所だ。

は旅行ケースを持ち、下に降りて行った。

が下に降りて来たのを見計らってリムジンから人が現れた。

瞬間、は息を飲んだ。

陽の光に輝く長い金髪、スーツの外からでもその身体は引き締まっている事が
分かり、整った顔立ちに加えてモデル並みの長身。

瞬きも忘れて見つめてしまった。相手が声を発するまで。

「アテナからの勅命よりギリシャ・聖域から来たミロという。聖域までの護衛を仰せ
つかった。よろしく頼む。」

ハッと我に返った。

(やばいっ!変な顔してなかったかしら!)

といいます。日本まで御越し下さりありがとうございます。こちらこそ
よろしくお願いします。」

努めて冷静に挨拶をするが心の中では、
(すっごいいい声してる! 勅命って! 護衛って何!!沙織〜〜っ!!)
かなり焦っていた。

美形な外国人は見慣れていると思う。しかし、ミロは何かが違う。

纏っている空気が違う。

はそう思った。

「では、行こうか。」

の荷物をトランクに詰めながらミロが促した。

空港に向かう車の中、は落ち着かなかった。ギリシャにいる沙織の事を聞きたか
ったが、躊躇われる。

ミロから感じられる圧倒的な雰囲気とさっきの「勅命」という言葉。

沙織、つまりアテナはミロにとっては絶対君主のようだ。その沙織の事を話すのは
気が引けてくる。

しかし、ミロと共通に話せる事といえば、沙織のことぐらいしか
今のには思い付かなかった。

星矢達の事も話せたはずなのに。

不意にミロから話しかけた。

「突然のギリシャ行きで驚いたのではないか?」

「え!・・ええ、かなりびっくりしました。いきなり手紙が舞い落ちたと思ったら、2日後
に迎えが 来るって書いてありましたから。」

「ふ、その迎えというのが俺なわけだな。」

「沙織が来て欲しいっていうのなら、友達としては放っておけませんから。」

「友達か・・。」

その低く呟く様な言葉にの胸は大きく跳ねた。

改めてミロの顔を見ると、端正な顔立ちだけでは無く、その瞳にも吸い込まれそうだった。
意志の強さが感じられる瞳だ。

胸の鼓動を隠すように笑いながら話しかけた。

「でも、私なんかに護衛なんて、なんだか大袈裟。すみません、ミロさん。」

「そんな事は無い。アテナの大切なご友人に何かあっては大変だからな。なにより、
アテナが悲しむ。」

ニヤリと口の端を少し持ち上げた表情に、は又も目を奪われた。

(モテるんだろうな。)
などと思いながら。

「それと、俺のことはミロで構わない。あなたに気を使わせているみたいだからな。」

「は・・はい。分かりました・・」

「敬語もいいぞ。」

又してもニヤリと笑って見せた。

「うっ、了解。・・・そういえばっ!!」

いきなりのの大きな声にミロは驚いたような顔になった。

「日本語上手ね。上手すぎて全然疑問に思わなかった。」

「・・・・・。」

(あれ・・変な事言っちゃった?!)

妙な沈黙の後、

「我等聖闘士は任務となれば世界各地に飛ぶため、ある程度のレベルまでは
話せなければならいのだ。」

「へぇ〜。」
(ビジネスマンに負けないかも。)

「特に日本語は、アテナがお話しになるから必須だ。」

「はぁ、皆さん語学が堪能なんだ。そういえば、星矢や瞬、紫龍、氷河、一輝達も
ギリシャ語の他にもいくつかの言葉が話せるみたいだし。」

よく顔を合わす少年達を思い浮かべる。

聞き慣れた青銅聖闘士達の名前が出て来て、ミロはを見た。

「その5人とは中が良いのか?」

「ええ、まあ。彼らが小さい頃から知ってるわよ。あと、邪武や市達も。」

そこまで聞いていたミロは先程のニヤリ笑いとは別の、柔らかい笑みになった。

「なるほどな。」

「え、なるほどって?」

「いや、こちらの話だ。」

また前を向いてしまったミロに、詳しい事は聞けず、も前に向きなおした。

(ミロのさっきの沈黙、何だったんだろう。気になる。)

などと考えている内に、リムジンは空港に入って行った。



Next

メニュー



文章をこんなにじっくり書いた事がないので(いつも中途半端)どう進めていいか悩みながら書いてます。