ライトな二人ー19ー










乱暴に車の中に押し込まれた沙織は呆気に取られていたが、すぐに自分の置かれた状況を把握した。



これは、誘拐なのでしょうか。



車に乗っている男達はどれも顔は見たことが無い。

様子を探ってみるが、小宇宙は一般の人と変わりが無く、聖闘士ではないようだ。

助手席の男が口を開いた。

「手荒な真似をして申し訳ない。城戸沙織嬢。」



城戸沙織。

やはり、聖域とは関係がないのですね。



「何処に向かっているのですか。」

沙織の声色に男達がはっとなった。

とても13歳とは思えない威圧感がある。

「聡明な貴女なら分かると思いますが、下手に騒がない方が身の為です。」

「騒がないのですから、質問には答えて頂いても宜しいでしょう?」

「!」

攫われて自分に危険が及んでいるというのに、決して引かない沙織に逆に尊敬の念さえ沸き起こってくるような錯覚に陥る。

「ふ、いいでしょう。我々もボスの所ですよ。直に貴女と話がしたいそうです。」

「ボスとは誰です。」

「城戸沙織嬢。質問はここまでです。あとは大人しく願います。」

男の口調が厳しいものに変わり、沙織は大人しく従った。


外の気配を探ると、良く知った二つの小宇宙がぴったり付いて来るのが分かった。





「付いて来れるか、星矢。」

「むっ。車の後を付ける位、どうって事ないさ!」

「そうか。頼もしいな。」

「ミロっ、あんた俺をバカにしてるだろっ!」

「そんな事はない。」

軽い会話をしているが、二人とも視線は前の車から離してはいない。

「沙織さんは無事みたいだ。」

「ああ。今すぐに命をどうこうとはしない様だな。」



その時、ミロと星矢に話しかける小宇宙が響いた。



《ミロ、星矢。》

「アテナ!」

「沙織さん!」

《申し訳ありません。私が不甲斐ないばかりに捕まってしまいました。》

「お気になさらずに。今、助けに行きます。」

「沙織さん、車の中の様子は?」

《私の両隣に一人づつ、助手席と運転席で4人です。》

「おケガはないですね。」

《ありません。それと、この人達は私を城戸沙織として攫っているので、聖域とは関係なく、勿論聖闘士ではありませんので、穏便にお願いします。》

「一般人ねぇ。」

「時間を掛ける必要は無い。さっさと片付けるぞ。」

走っていた速度を速め身を翻すと、ミロは沙織を拉致した車の手前50m程に降り立つとそのまま車を迎え撃つ。



「前に人がっ。」

「何。」

前を見ると、確かに長髪の一人の男が居た。

車の軌道上に立っているというのに、長髪の男は逃げようともせず、こちらをじっと見ている。

「自殺願望者か?このまま進めろ。退かないあいつが悪いんだ。」



徐々に車が間合いを詰めていき、もう少しの距離でミロと接触っ、という所で車がいきなり停止した。

かなりの速度を出していたため、車内にも衝撃が伝わったが、乗っている男達は一様に何が起こったのか理解出来ていない顔をしている。



「うっ、嘘だろっ!!」

よく見ると男が片腕で車を止めていた。

あり得ない事態に混乱した運転手はアクセルを力任せに踏むがぴくりとも動かない。エンジン音が響くだけだった。

ハンドルも右に左に切るがこれまた動かない。

しかも前の男は不適な笑みを湛えて余裕そのものだった。

車内に未知との遭遇の緊張が走ったが、その空気を壊す破壊音がした。

「なんだ、おまえは!っわ!」

後部座席の一方のドアが鍵が掛かっていた筈なのに開けられており、仲間の一人が外へ引きずり出されている所だった。



「沙織さん!助けに来たぜ!」

「星矢!」

星矢が沙織の手を取るとあっという間に外に連れ出されてしまった。

慌てた犯人の3人は急いで車から降りると、沙織奪回のため臨戦態勢をとる。


「小僧!!おとっ・・・。」

銃を構えた男が言いかけたが、最後まで言えず、その男と残りの二人もその場に昏倒した。

星矢に気を取られたため、犯人の注意が削がれたミロが一瞬にして3人を倒したのだ。


「聖闘士が相手ではないのだからこんなものか。」

ふぅ、と息を吐き、アテナの無事を確認する。

「アテナ。」

「ミロ、ありがとう。星矢もね。」

ミロと星矢にお礼を言うと、何かを思い出したようにハッとなった。

さんはっ!」

「大丈夫だよ、沙織さん。カミュと瞬がついてるから。

「カミュと瞬が・・。そうですか。」

「そうそう。本当はカミュも沙織さんを追いかけようとしたんだけどさ、ミロが"お前はを守れ!"ってカミュを制したんだよ。」

その時の事を思い出した星矢は目を輝けせている。

「いや〜、カッコ良かったぜ、ミロっ。」

「星矢、それ以上言うな!」

星矢の言い方に気恥ずかしさを感じ、星矢の頭をわしわし混ぜた。

二人の様子をくすくす笑いながら見ていたが、沙織はまたある事を思い出して不安気な顔になった。

「でも、さん、私を助けようとして突き飛ばされたんです。ケガをしていなければいいのですが。」

「突き飛ばされたのですかっ。」

「ええ。」

ミロも心配そうな表情になる。

「沙織さん、すぐにカミュ達と合流しようぜ。」

「早くこの場から離れた方がいいでしょう。この者達は如何為さいますか?」

未だ倒れている3人に目を向ける。

「このままにして置きましょう。一方的に向こうが仕掛けてきた事ですし、失敗した以上大事にはならないでしょう。誰がこのような事をしたのかも、大体は予想が付いてます。」

「本当っ、沙織さんっ。」

「この続きはカミュ達と合流してからだ。」

ミロがカミュの小宇宙を探ると、カミュ達は沙織が攫われた場所からすでに離れていた。






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はい、沙織さん誘拐事件はこれで解決です。あまりひっぱるネタではなかったんで、あっという間に解決してしまいましたが相手が一般の人ならこんなものだと思います。