ライトな二人ー18ー










久しぶりの沙織との買い物は楽しかった。

私達は星矢、瞬、ミロ、カミュがいるのも忘れて、色々な店を回った。





星矢は本当にうんざりした顔を見せ、瞬もやや疲れ気味だ。

ミロとカミュは女性の買い物はこんなものだと諦めて気にしていない様子。

しかし、疲れているのは確かだ。

「自分の興味がないものに付き合うのは結構疲れるのだな、ミロ。」

「まあな。しかし、アテ・・いや、沙織嬢は嬉しそうではないか。それだけで俺達の疲れなど癒されるというものだ。」

ミロの視線の先には、今は普通の13歳の少女に戻っている主君と、隣で一緒に笑っているの姿がある。

「優等生な言い方だな、ミロは。」

「我慢できなくなったか、星矢。」

視線は沙織とに向けたまま、ミロは星矢に返す。

「だってさ!何件店に入ったと思うんだよ!しかもっ、買い物に来てるのに何も買ってないんだぜっ!何が楽しいんだかっ。」

「落ち着いてよ、星矢。女の子の買い物はこういうものだって思わないと、余計疲れるよ。」

瞬が星矢を宥めているのを聞きながら、まだまだ子供だなと星矢に分からないように笑っていると、沙織とがこっちに戻って来る所だ。

「お待たせ〜。」

楽しそうなの声がする。その手には何も買われた物がない。これが星矢のイライラを高める事になった。

「買い物に来たってのになんで何も買わないんだよ。」

不機嫌な星矢がに詰め寄る。そんな星矢に何食わぬ顔では返した。

「だって、買いたいって思うのがないんだもの。しょうがないでしょう。」

「星矢、疲れましたか?」

沙織が気遣うように星矢に聞く。

「沙織さん達はどうして疲れないのさ。」

「星矢ってば、イライラをぶつけるのは良くないよ。すみません、沙織さん、さん。」

「いいのよ、瞬。あ、星矢、お腹空いてない?お昼のいい頃だし。」

「ん・・・・。」

星矢の勢いが一気に落ちた。横で瞬が「良かったね。」と星矢に囁いている。

「ミロとカミュも、連れ回しちゃったから疲れたでしょう。お昼にしない?」

「まあ、疲れていないと言えば嘘になるが、星矢は腹が空いて我慢できない様子だからいいぞ。」

ミロに続いてカミュも頷く。

「じゃあ決まりね!沙織も良いよね。」

「ええ。私もお腹が空いてきたので丁度良かったです。」

皆に意見をまとめたが何を食べようかと沙織に聞きながら並んでいる。

その後ろに、ミロ、カミュ、星矢、瞬が歩いてくる。




みんなの先を歩きながら角を曲がった所で、それは突然起こった。




曲がったすぐそこに男が立っているのが見えた。



の前に男の腕が伸び、有無を言わさず沙織を傍に止まっていた車に連れ込もうとした。

「・・・きゃっ!」

「沙織!!!」

咄嗟に沙織の腕を掴もうとしたを、男は乱暴に突き飛ばし。

車のドアを閉めると、大きなエンジン音を立てて走り去ってしまった。

突き飛ばされたは危うく地面に倒れそうになるが、しっかりと支えてくれる腕がを受け止めた。

さん!」

「っ瞬!」

ケガしなくて良かったという風に瞬は安堵の息をついたが、はそれどころではない。

「瞬っ!大変なの!沙織がっ!!」

「大丈夫だよ、。」

「カミュっ!」

カミュが落ち着いた声でに話し掛けてきた。

「ミロと星矢が後を追っているから心配は無い。あの二人なら無事にお連れして来るだろう。」

「ミ・・ロと星矢が・・・。」

「うん。二人とも、特にミロなんかあっという間に行ってしまったから、そんなに時間は掛からずに沙織さんと一緒に帰って来るよ。」

カミュと瞬の落ち着きように、次第に落ち着き、事態が呑み込めてきた。

「そう、なら大丈夫ね。」

ミロと星矢がいれば、沙織が無事に戻って来ると安心できたら、今度は違う感情が出て来た。



ミロが沙織を追いかけて行った。



その事実がの心に暗い影を落とした。



「でも、沙織さんを攫っていったのは誰なんだろう。」

「さあな。アテナや聖域に敵意を持つ者だとしたら、それなりの小宇宙も感じるが、先程の場合は全く感じなかったからな。」

「そうだよね。それで僕達の行動も少し遅れてしまったんだよね。」

「となると、一般人か。一体何の目的で・・・。」

「たぶん、犯人はグラード財団総帥として沙織を連れて行ったんだと思う。」

静かだが、はっきりとが主張した。

「本当、さん?!」

「うん、だってあの男、沙織より近くにいた私をわざわざ突き飛ばして沙織を連れて行ったの。それにここアテネにある企業と財団が今、ちょっと揉めてる最中なのよ。」

「揉めているとは、どんな事でだ?」

「今年、アテネオリンピックでしょう。色々な国、企業がスポンサーや援助に参加しているんだけど、グラード財団は世界中で展開してるからその半分ぐらいが財団の関連企業や会社なわけ。それで、ある企業が利益を独占しすぎだって言ってきて、何社かは手を引かせろって結構言ってきてるのよ。」

「財団側はどうしたの、さん。」

「関連はあくまでも関連にすぎないから、利益が直接財団に返ってくることはないから、手を引く理由はありませんって返事をしてたの。」

「なるほどな。業を煮やして遂に強硬手段に出たわけか。」

「そうね。この後は、お決まりのように総帥の無事と引き替えに、オリンピックから手を引けって要求してきそうね。」

「犯人側は沙織さんを攫うのに成功してもう勝った気でいるんだろうね。最強の聖闘士が追っている事も知らないで。」

瞬の言い方が犯人側を哀れんでいるように聞こえ、それが可笑しくて不謹慎と思いながらも苦笑してしまった。

「瞬。いかに相手は一般人とはいえ、我々がついていながら易々とアテナが連れ攫われてしまった事は落ち度だぞ。それを忘れるな。」

「・・・はい。」

厳しいカミュの指摘に瞬は素直に頷いている。

なんだか理想的な先輩後輩のようで微笑ましかった。

。」

「ん?」

「必ずアテナはお帰りになるから心配はしなくて大丈夫だからな、」

「・・・ありがとう、カミュ。」

カミュの心使いが嬉しかった。

「あ、ねえ、カミュ。」

「?」

「カミュも犯人を追わなくていいの?気になるでしょう。」

「確かに気になるが、を残しては行く訳にはいくまい。」

「瞬がいるのに。」

「まあ、そうなのだがな。」

どこか言葉を濁している感じのカミュを不思議に思うが、言いにくい事でもあるのかと思い、それ以上はも何も言わなかった。

沙織が無事でいる事を祈りながら、別な事も考える。


ミロ達聖闘士を好きになるって、もしかして考えていた以上に大変な事なのかもしれない。






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やぁっとここまで辿り着けました(^^;)。ここが小さい山場なんですが、もう少ししたらまた(私にとっては)山場が訪れます。