ライトな二人ー17ー







ミロとカミュからアテナに敵意を持つ者は確実にいると聞かされ、沙織がアテネ市内に来る事に私も少し慌てていたが、ミロとカミュは私以上に慌てている事が口調と表情に出ている。

すぐ合流出来るよう、図書館の中から正面入り口へ移動中カミュが聞いて来た。

「誰かと一緒に来られると言っていたか?」

「ううん。ただこっちに来るとしか。でも一人で来る事はないと思うわ。沙織は一人で行動する事が、どれだけ周りに影響するか知っているもの。」

「そうなのだが。」

二人とも難しい顔をしている。


沙織がアテネ市内に来るだけで、神経を尖らせるなんて、沙織も大変だな。


ミロとカミュは沙織を無事に聖域に送りとどける事のみしか考えていないようだ。


今のミロは沙織の事しか考えていないのね。

ミロの表情からそう感じ取ったは、小さな胸の痛みを自覚した。


・・・痛み?

・・・妬いてる?

・・・沙織に・・・?


湧き上がった自分の感情に、は愕然とした。

小さい頃から見守ってきた沙織に嫉妬してしまうなんて。

は小さな痛みを打ち消すように自分を叱咤する。


ばかばかっ!私のばかっ!!ミロが沙織を心配するのは、主君にもしもの事があったら大変だからでしょうっ。命がかかっているんだから!!


星矢達が何度か死線を彷徨っていた光景が浮かび、聖闘士の戦いが命のやり取りである事を思い出す。

背すじが寒くなった。


沙織・・・ごめんなさいっ。ごめんなさい!・・






「星矢と瞬が一緒だな。」

「うむ。どうやら二人だけのようだ。」

ミロとカミュの話しにハッとして辺りを見回すが、沙織の姿は見えない。

沙織は?と二人を仰ぎ見るとカミュが説明してくれた。

「まだ此処に到着するまで少し時間が掛かりそうだ。右手からだ。」

ああ、小宇宙で場所が分かったのね。

カミュに言われた通り右手側を見て、暫く沙織を探していると。

「いらしたぞ。」

ミロの声に、注意を向けると星矢と瞬と一緒に沙織が歩いて来るのが見えた。

「沙織っ。」

気付いて貰えるよう、大きめの声で呼んで手を振るとすぐに気付いてくれた。

さん!」

沙織が笑顔で駆け寄って来た。

「お仕事はもう終りましたか?」

「ええ、もう片付けたわよ。」

「お疲れ様でした。ミロとカミュもありがとうございました。」

お礼を言うが、ミロとカミュからは緊張が解かれない。

「アテナ。市内を歩かれるのは良いのですが、そういう事は前もって言って頂きたいのですが。」

カミュの言葉に星矢が横やりを入れた。

「固い事言わないでくれよ。沙織さんだってたまには羽を伸ばしたいのさ。ねえ沙織さん。」

「星矢っ、お前は聖闘士としての自覚が足りないぞ!アテナの護衛をするのならもう少し緊張感を持て!」

ミロが言うが。

その時、静かな沙織の声が間に入った。

「ミロ、カミュ。」

星矢と瞬に向けていた視線を沙織に戻す。

そこには悪戯っぽい笑みを浮かべている沙織がいた。や星矢達は良く見る沙織なのだが、ミロとカミュはこんな嬉しそうなアテナを見たことがなく、次の言葉を緊張しながら待った。

「ここはアテネ市内ですよ。分かっていますね?」

、星矢、瞬は沙織の言っている意味が良く分からなかったが、ミロとカミュは瞬時に理解し、少なからずうろたえている。

二人の反応が面白くて、沙織はついつい笑ってしまう。

「私の身を案じて下さるのなら、お願いしますね。」

ミロとカミュは、お前が先だっという感じでお互いを見ている。

ここにきて、沙織の言っている事がには大体分かってきた。

諦めたのか覚悟を決めたのか、ミロが真剣な表情になり沙織に向き合う。

「分かりました。あなたを護るためです、・・・・・沙織嬢。」

自分の呼び名に満足した沙織は満面の笑みを崩さない。

瞬は、「ああ、なるほどね。」と納得し、星矢は「そんな事に大袈裟だな。」と呆れている。

「そんな事と言うけどな、星矢。我々は慣れていないのだから仕方ないだろう。」

ミロとカミュは苦笑交じりだ。

「そうは言っても名前を呼ぶだけだろ。でも珍しいものが見れたぜ。な、さん。」

「うん。沙織の呼び方はよく分からないけど、ミロとカミュがうろたえる所はきっと珍しいと思うわ。」

まだ少年の域から脱していない星矢や瞬達と違って、精悍なミロとカミュのうろたえた姿は滅多に見られないだろうし、何よりそんな二人が微笑ましく見える。

「ミロ、カミュ。アテネだけでなく、他の地域でも私のことは"城戸沙織"と呼んでください。」

「はぁ。」

カミュは歯切れの悪い返事をする。まだ少しは抵抗があるようだ。

さん、このあと私に付き合って頂けます?」

「私は構わないけど。何、買い物?」

ちらりとミロとカミュの方を向いて、いいの?と聞いてみる。

「沙織嬢、我々もご同行します。よろしいですね。」

「勿論です。さあ、さん行きましょう。星矢と瞬も。」

沙織のペースになって来たが、楽しそうな沙織を見ているとその表情を曇らせたくないと思えてくる。

そういえば、沙織と出かけるの久しぶりだな。
沙織もその立場上、街で買い物なんてそうそう出来ないものね。

つき合わされる皆には悪いけど、私も楽しんじゃおう!








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黄金聖闘士に、沙織さんのことをアテナではなく沙織と呼ばせたらどんな反応するのかと思いまして、こんな流れになりました。