ライトな二人ー16ー












閲覧室でを待つ事にしたミロとカミュは適当な本をそれぞれ手に取った。

勿論、意識は常にの居る個室に注意を払いながら。

ミロは今朝までのと今のの変化を考えていた。

アテナの友人、ひいては青銅聖闘士たちにとっては姉のようなによそよそしい態度を取られるより、今の物怖じしないの方が付き合いやすいのは確かだ。

ましてやはアテナにとても近い場所に常にいる。これからも何度も顔を会わせる機会があるだろう。



良い人間関係を築きたいと思う。



ふと、そこまでに至って思考が止まる。



いくらアテナに近い場所にいるとはいえ、は"聖域"と関係がない。

関係ないからこそ、アテナに近い存在のため何かしらの事件に巻き込まれる可能性があるだろうから、今回みたいに護衛に付くのは一向に構わない。

それによって犠牲者が増えない事が俺の役目だ。

がどういう風に接してこようが、自分の任務に支障が出るわけではない。

そのはずだが。

とは良い関係を築きたいと思っている自分がいる。


こんな自分をどう説明したら良いものか。



ぐるぐると考えを巡らせているミロをじっと伺っている視線があった。

ミロの向かいに座っているカミュだ。

ミロが心此処にあらずな様子になったのを感じてしばらくミロを観察していたのだが、いつも自信に満ちている友人は珍しく何かに迷っているように思えた。


(ミロ。)

いきなり頭の中にカミュの声が割り込んで来てミロはびくっと体を震わせた。

(何だカミュ。小宇宙で直接話しかけてきて。)

(こんな静かな場所ではどんな小さな声でも目立つからな。)

確かに。この閲覧室はそれぞれが本を読むことに集中しているため、ページをめくる音以外はほとんどない。

(それで、何だ。)

ミロも小宇宙で話しかけた。

(何か考えているみたいだが、注意は怠るなよ。)

(分かっているさっ。)

(怒ることか?ミロ。)

(怒ってなどいない。)

本を片手にカミュを睨む。

ミロから先程の迷いが消えている事に気が付き、カミュはそれ以上何も言わず本に視線を戻した。







ひたすらキーボードを叩いていた手を止め、大きく伸びをすると腕時計に目を向けた。

「意外と早く終るかも。個室にしてもらったおかげかな。」

一旦仕事から集中が途切れると頭に浮かぶのはミロと光速移動した時のミロの腕の
力強さだった。

(うわっ!)

思い出した途端、顔が赤くなってきた。

「せっかく集中してはかどってるんだからダメダメ!!」

意味不明に両手を振って雑念を追い払おうとしてみる。



でも、ミロと普通に話せた。
気持ちの持ちようでこんなにも気が楽になるなんて。


ミロと話せた事に嬉しさを感じながら順調に手を進めていると、携帯が鳴った。

「あれ?」

聖域にいる時は圏外だった携帯にメールが入った。

中を確認すると、

「・・・あ、うそっ。」




のいる個室に注意を払っていたミロとカミュは同時に反応した。

「もう終ったのか?」

「随分早く終ったのだな。まだ2時間は経っていないぞ。」

2人が怪訝に思っているのは、が小走りでこちらに向かっているからだ。

何をそんなに急いでいるのだろうか。

やがてが姿を現した。やはり急いでいるようで表情に僅かに焦りが見受けられる。

ミロが立ち上がってを迎える。

「どうした。」

カミュも立ち上がりながら聞く。

「早かったな。終ったのか?」

「うん、おかげ様で。」

はカミュが声を小さくしたのに習って、周りに気を使いながら二人にだけ聞こえるようにメールの内容を知らせた。



「あのね、今から沙織が図書館に来るって。」

「「えっ!!」」

ミロとカミュは同時に固まった。









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