ライトな二人ー14− 十二宮から上がってきて沙織の部屋へ入ると、沙織は既にテーブルに着席していて私を待っていた。 「お待たせ。待たせちゃった?」 ここへ来て、朝食は沙織の部屋で一緒に食べることにしていた。沙織の部屋なら誰にも邪魔されずにゆっくり食べられると、沙織が提案してくれた。 「いいえ、待ってはいませんが。さん、何があったんです?」 心配そうな顔でじっと見つめてくる。 「そんな顔しないで。ただびっくりして大声を出しちゃっただけなの。」 「ミロが何か失礼な事でも?」 ミロの名前が出て少なからず驚いた。 「え、どうしてミロなの。」 「さん、天蠍宮で声を上げましたよね。」 どきっ。何故知ってるの!!私の心の声を知ってか知らずか、沙織は先を続けた。 「小宇宙です。さんの小宇宙が大きく爆発したのを感じて目が覚めたんですが、すぐさんの小宇宙を探したら天蠍宮から感じられたので。あ、小宇宙というのはですね、誰もが持っているもので・・・・・」 アフロディーテから聞いた事とほぼ同じ説明が繰り返されたので、右から左に素通りしてしまった。 それよりも。 なに、小宇宙で人物特定どころか場所まで知る事が出来るの? 「・・・・というものが小宇宙なんです。お分かり頂けました?」 「うん。大体は分かったかな。お腹空いちゃった。食べようか。」 「はい。いただきます。」 「いただきま〜す。」 朝食を食べながら天蠍宮での事を思い出す。 思い出すたび自分の情けない失態に気分が重くなる。 ミロになんて思われただろう。 デスマスクにあんな事言われた原因を作ったのは私だし、印象悪くしたかな。 でも。 ミロがあういう風にケンカするなんて、意外。見た感じ、冷やかしとかは冷静に軽く流しそうだけど。 ミロとデスマスクのやりとりを浮かべると、今度は自然に笑みが漏れる。 意外な面が見れたのが嬉しくて、ミロに会うのを怖がったいたのがバカバカしくなって来た。 もっとミロの違う面が見たい。 何を考えているのか知りたい。 はぁ〜、今のままじゃ無理ね。 自分の考えに没頭していたが、沙織がこちらを見ていることに気が付いた。 「沙織?」 「あ、すみません。」 「何なの?」 「さんて、表情がくるくる回るなと思って。」 「あ。」 考えていた事が顔に出ていたようで、恥ずかしくなった。 「お仕事の時とは全然違いますね、さんは。」 「面目ない。顔に出易いって分かっているから自分では気を付けてはいるんだけどね。」 「お仕事以外では構わないと思いますけど。さんらしくて大好きですわ。」 「あら、嬉しい事言ってくれるのね。私も沙織のこと妹みたいで大好きよ。」 「では、私達両思いですわねっ。」 悪戯っぽい笑みで沙織が言うと私も声を出して笑う。 愛の告白(?)をしあった二人は嬉しそうに笑い続けた。 皆が去った後、天蠍宮に1人取り残されたミロはのことを考えていた。 どうも皆に接する態度と、自分に接する態度が違うように感じるのは気のせいだろうか。 日本で最初に会った時は普通に話していたが、聖域に着いてからの様子がおかしい。 「俺は何か気に障るようなことをしたんだろうか。」 考えても一向に思い当たらない。 アテナの大切な友人であるは、俺たち聖闘士にとっても大切な存在だ。 そのため、俺だけならまだしも、に対しても侮辱するようなデスマスクに憤慨したが、は気を悪くしていないだろうか。 がいる十二宮の上を見上げながら思う。 「沙織、インターネット出来る所ってあるかな。」 「インターネットですか。それでしたら、アテネ市内の市立図書館に行けば出来ますよ。でもどうしてまた?」 「課長に提出する報告書がまだだったのよ。期限はまだ先だけど、私いつ日本に戻るか課長に言ってないから早く送った方が良いと思って。ついでにやり残した事もしたいかなってね。」 「そういう事でしたら行った方が良いですわ。私も急にさんを呼んでしまいましたから、お仕事の方を少し心配をしてましたの。」 「じゃあ、早速、朝食終ったら行ってくるね。場所教えて貰える。」 「さん。お1人で行くつもりですか?」 「え? そのつもりだけど。」 何か不都合な事でもあるの? 「いけません! ダメですっ!」 「ええっ!? なんで?」 「さんみたいに綺麗な人の1人歩きは危険です!黄金聖闘士のどなたかに私がお願いしておきますので、その方と行って下さい!」 そんな大袈裟な〜〜、と言いかけたが沙織がおまりにもきっぱり言い切ったのでしぶしぶ承諾する羽目になった。 朝食を食べ終わると、沙織は黄金聖闘士に声を掛けて来ますと席を離れ、私は図書館へ行く準備をするため、部屋へ向かった。 コンコン。 準備を始めて間もなく、ノックの音が聞こえた。 「はい。」 「様。アテナ様からの言伝えです。準備が終りましたら十二宮の下までおいで下さるようにと。」 「分かりました。ありがとうございます。」 沙織からの伝言を伝えに来たのは、沙織付きの女官の1人だ。何かと私の身の周りのお世話もしてくれている。 荷物を持って、十二宮を下って行く。途中、何人かに何処かへ行くのかと聞かれ、仕事をしに図書館までと言うと、ご苦労さん、とそれ以上は追求してこなかった。 ようやく長い長い階段があと少しという所で、下のほうに二人の人物がいた。 近づかなくても誰かはすぐに分かる。 ミロとカミュだ。 沙織が声を掛けた黄金聖闘士て、あの二人? 階段を降り終わるとカミュが話しかけてきた。 「準備は良いか?。」 「うん。よろしくお願いします。」 「アテナからの任命だ。安心して仕事に専念して良いぞ。」 「ありがとう。でも沙織も心配性だな。1人で行くって言ったら勢いよく、ダメって言われたわ。」 ミロとカミュが顔を見合わせた後、今度はミロが口を開いた。 「アテナのそのお考えは当然のことだな。」 「そうなの?ミロ。」 「そうだ。聖戦が終って強大な敵がいなくなったとはいえ、アテナ、もしくは聖域に仇なそうと考えている輩は大なり小なり確実に存在している。」 「ミロの言う通りだ。そして、そういう輩は聖闘士の総本山があるギリシャを絶えず見張っているのだ。」 「それって、聖闘士が一番出現しやすい場所だから?」 「勿論アテナもだ。」 カミュの間を置かない言葉に、沙織が置かれている立場が戦いと隣り合わせだと伝わってくる。 「何かが起こってからでは遅いからな。アテナはそれを心配されているのだ。」 「そうだね、カミュ。沙織の言っていた意味が分かった。」 ミロとカミュは物分りの良いに安堵の表情を浮かべた。 「では行こう。こっちだ。」 ミロとカミュに促され、後を歩いていく。 黙って後をついていくと周りの景色が段々と自然が多くなってきた。もともと聖域内は草花が豊富だったが。 「よし、この辺りでいいだろう。」 「そうだな。」 意味が良く分からず、黙っていると、カミュが説明してくれた。 「ここ聖域は神話の時代からアテナの結界が張られている。それは外からの敵の侵入を防ぐためと、あとは何も知らない一般人が迷い込んで来ないためだ。正規のルートで入ってこないと出るのは一生無理だろう。」 とんでもない事をさらっと言われ、絶句した。 「その正規のルートものペースに合わせて進んでいては数時間掛かる距離だ。」 「数時間っ!!」 驚きのあまり声を出してしまうとミロとカミュが揃って吹き出した。 「あの、笑い事じゃないと思うけど。」 「その通り。そんなに時間を掛ける訳にはいかないから、俺たちに合わせて貰うぞ。、手を。」 まだ笑いが治まらないミロの言葉に素直に従う。 ここでミロはの変化に気がついた。今のは日本で会った時ののようだと。 一体なんなのだろうと不思議に思いながらの手をとると、今度は腰を引き寄せた。 びっくりしたのはで、突然ミロと密着した体を固くした。 「ミ、ミロ!あの、これは。」 の驚きが自分と密着したことによるものだと直ぐに分かったミロは、ふっと優しい笑顔になった。 女性らしいの反応を可愛いと思った。 「俺たちに合わせて貰うと言っただろう?」 「合わせるって?」 お互いの顔が近い距離での会話。 「勿論・・」 ミロがの体をさらに抱きしめる形になり、完全にミロの腕の中だ。 「光速にだ。」 「えぇぇっ!」 ミロが言う終らない内に体にドンっと衝撃が走る。 の視界はホワイトアウトし、何も見えなくなった。 Next メニュー |