ライトな二人ー13−














古代遺跡を思わせる風景を眺めながらひたすら降りていくと天蠍宮が見えてきた。

天蠍宮、ミロが守護する宮。

ここにミロがいると思うとどきどきしてきた。

今までの宮は平気で通る事が出来たが、天蠍宮だけはミロがいると思うと通るのが急に怖くなって来てしまった。


好きと自覚したら前よりミロに会う事が怖くなって来た。

もしミロに会ったらどんな顔をすればいいんだろう。

もちろんミロには会いたいが、まだ平静に会う自身がないっ。


ここで教皇宮に引き返そうとも考えたが、なんだか不自然なようで躊躇われる。

天蠍宮の入り口の前で、どうしようどうしようと暫く悩んでいると辺りが大分明るくなって来た事に気が付く。

入り口で悩んでたってしょうがない!

よしっ、走り抜けよう!!

そう決断するや否や、は天蠍宮を走り抜けるためダッシュした。

会えないのは残念だが、アイオロスやシュラやみたいに眠っているか、気が付いても顔を出さない事を願いながら。


走っているのに出口までがすごく長く感じるのはどうしてっ!


あと少しで出られるっ、と喜んだ瞬間、突然腕を掴まれ、私の体は前に出ようと勢いがあったため、その反動で体が後ろに引っ張られた。

-----っ!!!-----

「何をそんなに」

「きゃああああああっっっ!!!」

至近距離で聞く悲鳴に、の腕を掴んでいたミロは固まった。

は突然腕を掴まれた事に驚いて声を挙げたのだが、振り返り腕を取ったのがミロと分かると今度は全身が熱くなった。

ミロは何故が悲鳴を挙げたのか分からず、真っ赤な顔をして驚いているをただ見つめるだけだった。

も動けないまま、二人はその状態のまま暫く見つめ続けた。




沈黙を破ったのは。


「なんだっ!今の悲鳴はっ?!」

「無事か、!」

「どうした!!」

「ミロ!何があった!」

悲鳴を聞きつけ、天蠍宮に近いシュラ、アイオロス、童虎、処女宮のシャカではなくアイオリア、なぜかデスマスクも駆けつけて来た。

そこで5人が見たのは。

ミロがの腕を取って見つめあっている姿だった。

悲鳴の割には緊張感など無く、なにやら割り込めない雰囲気を作り出している二人に5人それぞれ顔を見合わせた。

大事な事態ではないらしい、と。

デスマスクは面白いことになってると内心笑っていたが。



とりあえず状況が分からないため、童虎が声を掛ける。

「ミロ、!」

二人はハッと我に返ったように童虎に振り向いた。

ミロは静かにの腕を離した。

「ミロ、あ・・あの・・。」

が声を絞り出すように言うと、ミロもに何か言おうとしたが、デスマスクによって遮られた。

「朝っぱらから騒々しい。秘め事ってのはもっと静かにするもんだぜ。ミロよ。」

「「はっ??!!」」

デスマスクのとんでもない物言いにミロとは同時に声を出した。

は次の言葉が出ず、口をパクパクさせていたが、ミロの行動に唖然とした。

ミロがいきなりデスマスクを殴りつけたのだ。

その場にいた全員がポカンとした。

殴られたデスマスクはさすがに倒れたりはしないが、それなりに効いたようで苦悶の表情を浮かべていた。

「ってめぇ、ミロ!いきなり何しやがるっ!」

「うるさい!昨日から何かと突っかかってくるな!口で言っても分からん奴には拳で分からせるっ!!」

「何アイオリアみたいな事行ってやがる!すぐに暴力に訴える奴は最低だぜ!!」

「あまえがそれを言うのか!!己を分かっていない23歳め!!」

「けっ!!気まずそうなおめえらを和ませようとした俺の優しさを土足で踏みにじむような事をしたんだぞ!!おまえは!!!」

「そんな優しさ迷惑だっ!!」


突然始まったミロとデスマスクの言葉の応酬にはただ呆然としたままだ。

シュラ、アイオリア、童虎、アイオロスは同時に溜め息をついた。

------子供の喧嘩か------

しかし放っておけば口喧嘩だけでは治まりそうもなく、その内必殺技を放ちかねない。

シュラとアイオリアで二人を止めに入っている間、童虎とアイオロスでから事情を聞くことにした。

「さて、。あの二人はシュラとアイオロスに任せておけば良いだろう。本当の所はどうなのじゃ。」

の声は十二宮はもちろん、教皇宮やアテナ神殿まで聞こえたからね。アテナや教皇も経緯を知りたがっているんだ。」

「私の声、そんな遠くまで聞こえたの?」

信じられないといった様子だ。

「声というよりは、の小宇宙が爆発したのを感じたのじゃよ。もっとも、天蠍宮の前後に位置するわしとアイオロスにはおぬしの声は聞こえたがの。のぉ、アイオロス。」

アイオロスが笑いながら頷く。

「聞こえたときは何事かと思ったぞ。」



「ミロ、熱くなるな。」

アイオリアがミロを宥める。

「デスマスクも煽るな。」

デスマスクにはシュラが。



ミロとデスマスクの小競り合いもひとまず一段落したようだ。

「言っておきますが、デスマスクが言ったような事はありませんからね!!」

「まあ、そうであろうな。ミロがそのような事をするとは思えんからな。」

「で、どうなんだ。。」

「起きたのが早過ぎたから散歩と思って十二宮を降りてみようと思ったの。教皇からせっかく十二宮を行き来する許可をくれたから。」

「声をあげたのはどうして?」

「あ・・、突然腕を掴まれたから驚いて思わず。」

「ミロ、腕を掴んだのは?」

「ものすごい勢いで天蠍宮を走っていたから、どうしたのか聞こうとしただけだ。」

「なるほどな。」

「そんなこったろうと思ったぜ。」

デスマスクが言うと童虎が突っ込みを入れた。

「こらっ。おまえがそれを言える立場ではないだろう。」

「しかし、。なぜ天蠍宮だけ走っていたんだ。」

「えっ。」

シュラの問いかけに詰まる。

「他の宮は普通に歩いていただろう?」

「〜ぅうん、そうだね・・・。」

はっきり答えない私に皆の視線が集まるが、正直になんて話せるわけがない!

「えぇっと、・・う、運動のために・・突然走ってみようかな、と。」

自分でもヘタな言い訳だと思うが、焦っているのと平均身長180cmの男達にみられている圧迫感のため、普段の思考が働かない。

「・・・そうか。」

「大人しそうに見えて、意外と猪突猛進型じゃな。」

「本当かよ。もしそうなら人騒がせだぜ。」

「突然走るのは体に悪いぞ。」

「体を動かしたい時は俺たちに声をかけてくれ。」

童虎、アイオロス、アイオリアは私のヘタな言い訳を自分達なりに解釈してくれたようだがシュラ、デスマスクは納得していない態度だ。

ミロなど、何も言わず私を見ているだけ。

「ミロ。」

一番被害を受けたミロに謝らないと。

「ごめんなさい。私が変な行動とったために嫌な思いをさせちゃって。本当にごめんなさい。」

何も悪くないミロに申し訳なくて何度も頭を下げて謝る。

。君が謝ることはない。俺が本当に謝って欲しい相手は失礼極まりないデスマスクだ。」

「一言余計なんだよ。ミロ。」

「俺の方も驚かせて悪かった。あまりにも真剣に走っていく姿に、そのまま見過ごすことが出来なくてな。」

その時を思い出してか、ミロが笑っている。

「そんな風に走ってたの?私っ。」

確かに必死だったけど、思い出し笑いをされるほど可笑しかったっ?!



静かに衝撃を受けただった。



。もう上に戻った方が良い時間だぞ。アテナとご一緒に朝食を取るんじゃろう。」

「もうそんな時間なんだ。ん、上に戻るね。
騒がせて本当にごめんなさい。それじゃあ。」

この場にいるのが気まずくて、小走りで天蠍宮を出て行く。



の後姿を見送っていた童虎が可笑しそうに笑い出した。

「いや、面白くて良い娘じゃな。アテナや紫龍達が慕うのも分かる。
では、わし達も戻るかの。邪魔したな、ミロよ。」

シュラとアイオロスは上へ、童虎、アイオリア、デスマスクは下へ降りていった。



童虎と別れ、アイオリアとデスマスク二人になった途端、デスマスクが堪えきれないように肩を震わせて忍び笑いを始めた。

「なんだ、デスマスク。気持ち悪いぞ。」

「なぁに、これから面白くなりそうだと思うと可笑しくてな。」

「何がだ?」

アイオリアにはデスマスクの言いたい意図が分からない。

「アイオリア、気付かないか?二人のこと。」

「???」

ますますもって意味が分からない。アイオリアは首を傾げる。

「ま、うまくいけば、近いうちに分かるんじゃねえの。」

「は?」

アイオリアにとって謎の言葉を残して、デスマスクはそれ以上は何も言わなかった。






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前々から自分はそうだろうなぁと思っていた事があって、この13話を書いて確信しました。逆ハー、というより登場人物の多い話を書くのは不向きと言う事が。この人数でも、私にとっては大人数。
2、3行進むたびに30分は手が止まって先に進まない、進まない。
「はて、この場合はどう話せば彼らしくなるだろう」と考えるとピタッとね。その手が止まるのがミロとヒロイン以外に当てはまるんだから困ったものです。
逆ハー書いている方って凄いよなーと読むたびに思います。