ライトな二人ー12− 気持ち良く目が覚めた。 まだ外は太陽が昇りきっていないようで、薄暗い。 私は伸びをするとベッドから降りて着替えだした。 「ご飯の前に朝の散歩に行ってこよう。」 静まり返っている廊下に出ると、なるべく音を立てないように外へ向かった。 「気持ち良いー。」 せっかく十二宮を自由に行き来して良いと言われたし、十二宮を降りてみようかな。 本来十二宮は侵入者を防ぐため、各宮を護る黄金聖闘士の許可無く通れないないらしい。 私の場合はアテナと知り合いていう事と、黄金聖闘士全員と目通りしたため教皇シオンからお許しが出たというわけ。 さて。 この前は沙織と話しながら昇ってきたから時間掛かっちゃったけど今は1人だし、時間を見ながら行けばいいよね。 そう考えて、足早に長い長い石段を降り始めた。 黙々と降りていくと双魚宮が見えてくる。 「通りまーす。」 本来なら許可が必要と聞いた後のため、一応声を掛けてみる。 ----------。 アフロディーテからの返事は無い。 聖域に滞在している間、黄金聖闘士は自宮に留まることが義務と聞いているから、アフロディーテはいると思うけど、もしやまだ寝てる? こんな時間だし、それは当然かな。 アフロディーテはまだ寝ていると思ってそのまま双魚宮を通り過ぎようと、半ばまで歩いた時。 「おはよう、。」 「っ!!」 突然声を掛けられてものすごく驚いた。 「アフロディーテ!!起きてたんだ、おはよう。」 「びっくりさせて悪かったね。」 男だと分かっていても見惚れてしまう微笑を浮かべて言う。 「もちろん眠っていたさ。でも少し前からの小宇宙が降りて来るのが分かったから起きて挨拶をしようと思ってね。」 アフロディーテの言葉に目をぱちくりさせる。 「私が来るのが分かってたの?」 「分かるさ。」 あまりにもあっさりした答えが返ってきて、は困惑した表情をする。それを見てアフロディーテは自分の言葉が足りなかったのが分かった。 「気配で分かったんだよ。我々はそれを"小宇宙"と呼んでいるがね。"小宇宙"は人それぞれ違うから個人を特定する事が出来る。」 --------本当に人間派離れしてる。 などと失礼な事を考えてしまうが口には出せない。 「聖闘士って超能力者みたいね。」 「ふふっ、褒め言葉として取っておこう。下に行くのかい。」 「随分早く目が覚めちゃったから十二宮を降りてみようと思って。」 「それじゃあ引き止めて悪かったね。先は長いし気を付けて行っておいで。」 「ありがとう。双魚宮通らせて貰うね。」 小宇宙で個人の特定が出来るんなら、私が十二宮を降りてるのが黄金聖闘士の皆には分かるって事よね。 考えようによっては便利だわ。 宝瓶宮も先程と同じように声を掛けながら中に入った。 すると、今度はきちんとカミュが姿を現してくれた。 「おはよう、カミュ。」 「おはよう。早いのだな。」 「カミュも私が来る事を小宇宙で分かってたの?」 「ああ、丁度起きていたからな。」 カミュの説明に、あれ?と思う。 「起きていたから?じゃあ、意識の無い時は小宇宙は感じられないの?」 「そうだな。のような普通の人間の小宇宙の場合は、眠っていたり、意識の無い時に感じるのは少々難しいな。」 「そうなんだ。」 また一つ、知らない世界を知った気分だ。 「小宇宙に興味があるのか?」 「ん〜、小宇宙より聖闘士の存在に興味があるかな。あなた達のような聖闘士が遥か昔からこの地上を護るために闘っているなんて、驚きの事実だものね。 だから、もっと知りたいって思うの。聖域のことや、聖闘士のことがね。」 本心からそう言っているだろうと分かる笑顔を見せられ、カミュは嬉しかった。 こうまで聖闘士の存在を受け入れてくれた反応を見たのは、初めてだった。 「そうか。そう言ってくれて嬉しい、ありがとう。」 「いえいえ。お礼を言われるような事は言ってないわよ。」 聖衣を纏っていないためか、少しはにかみながら礼を言うカミュはやはり同年代だな、と思う。 「それじゃあカミュ、そろそろ行くね。」 「ああ。」 は昨日あまり話せなかったアフロディーテとカミュと話せたことが嬉しくて、足取り軽く階段を降りていった。 次の磨羯宮、人馬宮は声を掛けても宮の主は姿を現さなかった。 気付いていても姿を現さないのか、はたまた時間も時間だし、まだ眠っているのか。 理由は分からないが、自分が通ったら顔を出すという決まりも無いし、人が通るたび顔を出していたら大変だろう。 は人馬宮を後にした。 Next メニュー |