ライトな二人ー11− 夜。 私は就寝前に沙織の部屋に来ていた。 話は今日の自己紹介のこと。 「今日はありがとう、沙織。最初は緊張してあまり乗り気じゃなかったけど、楽しかったわ。」 「そう言って貰えて良かったです。皆さんとも仲良くなれそうでか?」 「うん。最初、皆跪いていたでしょう。だから生真面目で無口な集団だと思ったけで、結構気さくだし、人間味溢れてるよね。」 「『人間味』って彼らはれっきとした人間ですよっ。」 私の表現が可笑しかったらしく、沙織はころころと笑う。 「そうなんだけどね。金の鎧、畏まった態度と言葉使い、沙織を『女神アテナ』と崇めている姿なんかは、小説や映画に出てくる中世の騎士みたいなんだもの。」 「そういうものですか?私は別に何とも思いませんけど。」 「沙織はいつも彼らに囲まれているから、そういう風に感じないだけよ、きっと。でも一般の人達が彼らを見たら、私と同じ事を思うでしょうね。」 ふ〜んといった感じで沙織は首を傾げる。沙織にとって、彼らの煌びやかさはあまり特殊ではないらしい。 「つまりね、それだけ全てにおいてインパクトが強いってこと。 でも皆の笑った顔が見れたから、恐れ多いとかはないな。これも星矢のおかげね。」 「星矢は周りを和ませるのが上手ですからね。わざとあんな風に言って笑いを起こしてくれるんですよ。」 「そうね。良い奴よね、ねっ、沙織!」 「え? は、はい・・・。」 私の意味ありげな視線に、沙織は僅かに頬を赤らめる。 ふふん、女神といっても女の子ね。素直な反応。 「っさん、ギリシャに来て頂いたのは今日のためですけど、もう少し此処にいて貰えないでしょうか。」 話を逸らしたわね。まあ、いいでしょう。 「え、本当?嬉しい。私も出来ればそうしたいって思ってたの。せっかく来た聖域だものね、私の知らない沙織をもっと知りたいし。」 「さん。」 嬉しそうに沙織が笑う。 「じゃあ、そろそろ部屋に戻るね。」 「はい、おやすみなさい、さん。」 「おやすみなさい、沙織。」 部屋に戻り1人になると思い浮かぶのはミロのことだった。 「はぁ〜。」 我知らずに溜め息が出てしまう。 きっと初めて見た時から好きになり始めてたのね。 今も目を瞑れば初めて見たミロの姿がはっきり浮かんでくる。 ・・・いいよね。好きになっても。 別にミロとどうなりたいとかは思っていない。 ただ、好きでいたい。見ていたい。 今はそれで満足だから、それだけでいい。 でも。 いつか、それだけじゃダメな時が来るのかな。 「はぁ。」 また溜め息が出る。 まあ、その時はその時よね! 考えたって答えなんて出ないし。 ミロを見るたびに湧き上がっていたどきどきの理由も分かったし、明日からはすっきりした気持ちでミロを見れそう。 そう考えると、今度はミロに会える事にわくわくしてきた。 会いたい。 声が聞きたい。 こんな気持ち、仕事に忙殺されて忘れてたな。 明日が楽しみだわ。 Next メニュー |