Misfortune Day ジャガイモを切っていたら。 「っ!」 突然の痛みには顔を歪めた。 見ると左手のひとさし指から血が出ていた。 「あらら〜、やっちゃった。」 血が出ているひとさし指を空しそうに見ながら呟いた。 とりあえず、切ったジャガイモを既にグツグツいっている鍋に放り込む。 絆創膏、絆創膏と、ひとり言をお供にリビングの中を歩いていると右足にガツンっと硬い物があたり、バランスを崩してしまった。 絆創膏がある棚に意識が集中していて、床に置いてあるゴミ箱に気が付かなかっただった。 「えっ?!うっ!わ〜〜っ!!」 手を着くのも間に合わず顔面強打してしまった。 「〜〜〜〜〜っっ。」 顔を中心に広がる痛みに耐えるため、体を動かすことも声を出すことも出来ずしばらくそのままでいるしかなかった。 「い、痛い〜っ。」 やっと起き上がり声が出せたと思ったら、強打した鼻付近に感じる生温かい感触、口の中が気のせいか鉄の味がする。 (・・・・・鼻血だ。) 指を切った次は鼻血。これから出かけるというのに何故ケガをしなくてはならないのか。 の中で苛つく気持ちが湧き上がってきた時。 ごぼぼぼぼぼっ〜 鈍い音にびっくりして振り返ると、鍋が泡を吹いていた。 「うそっ!鍋が!!」 急いでキッチンに向かう。 おまけに蓋がカタカタカタっと小刻みに音をならして余計にを焦らせた。 その焦りが蓋の取っ手を持てばいいのに、蓋のふちを持つという所業に走らせた。 当然、蓋自体は熱い。 「っ!!っぁあっついっ!!!!!」 叫び声を上げて蓋をあさっての方向に投げてしまった。 直後に響くガラスの割れる音。同時に床に物が落ちて割れる音。 食器棚のガラス戸に蓋がヒットし、中に並んでいたカップの幾つかが床に落ちて割れた音だった。 今聞こえるのは蓋を開けたことにより吹きこぼれが落ちついた、グツグツとした音のみ。 左指はまだ絆創膏が巻けず血を流し、鼻からも血が流れ、口の中は血の味がする。蓋を掴んだ右手は軽い火傷を負ったらしく、ジンジンと鈍い痛みがある。 は呆然とするしかなかった。 静まり返った部屋に、やがて徐々に冷静さを取り戻していく。 (もう、いいや。) これだけ災難が続くと、怒りなど何処かへ行ってしまう。もうどうでもいい気分になってきた。 「あ、早く準備しなくちゃ。」 時計を見ると約束の時間が近づいている。 ミロが迎えに来てしまう。 今日は城戸邸で沙織や星矢達とお昼ご飯一緒に食べる予定。 城戸邸には専属の料理人がいるが、それを食べるだけでは味気がないので、各自それぞれ料理を作って持ち寄っている。 まだ星矢達がそれぞれ各地で修行している頃、よく沙織と二人で行っていた昼食会に、今回は日本に来ていたミロと星矢達を誘う事にした。 出来上がった料理を詰めて仕度をして外に出ると、既に下にミロがいた。 「ミロ!」 きっとミロはずっとの部屋のドアを見ていたのだろう。とミロは同時にお互いを確認出来た。 「今行くね〜。」 元気良く階段を降りて行くに、災難の神は再び微笑んだ。 左足をついた途端、足首が変な方向に向いてしまったのだ。 「〜〜〜っ!!」 もはや声が出ない。 「っ!」 さすが光速で動ける黄金聖闘士! これでが地面に当たる前に抱きとめる事が出来る! ・・・はずであった。 しかしミロの腕にはではなく、が持っていたバックが収まっていた。 「何?」 一瞬ミロも事態が飲み込めないでいたが、階段の下でが尻餅をついていた。 「っ!」 のもとに駆け寄ると心配そうに顔を覗き込んだ。 持っているバックが放り出されないようにと自分に向かって投げたのは分かったが。 「まったく。自分よりこのバックの方が大事だったか?」 呆れたようにミロの手に収まっているバックをの前にかざした。 「・・・だって。ミロに食べて貰いたくて作った料理が入ってるから、とっさに投げちゃったのよ。」 ・・・・・。 嬉しいことを言ってくれる。 呆れた表情から微かな笑顔に変化する。 しかし。 「気持ちは嬉しいが、その結果がケガをしてしまっては俺にとっては意味がないぞ。」 そう言ったミロは少し怒っているように、には見えた。 自分の身を心配してミロが怒っているのが分かるから、それはそれでは嬉しいが、頑張って作った料理が崩れないようにとやってしまった行動も分かって欲しいと思うだった。 そのため、心配してくれているミロにすぐに"ごめんなさい"とは言えなかった。 フっとミロが笑うと。 「でも、ありがとう。大事に守ってくれたの手料理、食べるのを楽しみしているからな。」 「・・・ミロ。」 「立てるか?それとも何処か痛む?」 いつまでも座ったままのにまた心配になり、手を添えて立たせようとした 「左足を捻っただけだから平気。」 添えられた手に助けられ立ち上がると、服に付いた土を払う。 「顔どうした?」 「え?」 「鼻が赤いが。」 「えっ!!」 さっき転んで打った鼻が少し赤くなっているのは知っていたが、少しだっためファンデーションで隠せたと思ったが、バレてしまったらしい。 鼻の赤い間抜けな顔を見られ、慌ててミロから離れようとした。 離れようと体を捻った瞬間捻った左足首に激痛が走った。 「っ痛!」 「!」 痛みで力がぬけそうになるをミロがまた支えた。 「あ、ありがとう。」 「やはり痛むか、どれ。」 「え?わっ!」 突然の浮遊感に落ちないよう、自然とミロの首に腕を回す形となった。 「ちょっと。ミロ?」 「歩きにくいだろう。このままで行こう。」 「い、いいわよっ。そこまでしなくても私平気だから!」 「いいんだ。俺がしたいんだ。」 ミロの言葉に抱き上げられたまましばし固まる。 (ミロって本当にこういうセリフが似合う・・・。) でも。 こうして心配してくれて、何だかとっても幸せ。 「じゃあ、お願いします。」 幸せを感じて頬がほんのり赤く染まっていく。 「熱々だね〜、お二人さん。」 割って入ってきた声には驚いてそちらの方を見た。 「星矢っ!それに、瞬や氷河、紫龍まで!!」 途端に膨れ上がる恥ずかしさ。 ミロと二人だけなら、恥ずかしさはあれど素直に甘えられるが、人がいれば違う。それも知っている人なら尚更恥ずかしい。 「ミロ、降ろして!平気だから!」 「今更恥ずかしがる事もないだろう。」 「恥ずかしい!!」 「ミロに言う通り恥ずかしがる事ないんじゃん、さん。」 にやにや顔の星矢にの鉄拳が飛んだ。 ゴインっ!! 「いって〜〜。」 「うるさい、石頭っ。殴ったこっちの手の方が痛いわよ!!」 ミロの腕の中、真っ赤になりながら星矢を力一杯殴った。 を腕の中に閉じ込めて離さないミロ。 姉のようなと頼れる兄貴分なミロが付き合っていると聞いて興味半分、冷やかし半分でミロについて来たが、逆に二人のあまりのお似合いさにあてられてしまった四人だった。 深く考えていないので何の料理を作っていたかは突っ込まないでくださいね。 ミロに食べて欲しいものなので、(勝手に)煮物系だと思います(アバウト/笑) でもミロはお姫様抱きのまま沙織さんの所にいったのでしょうか。という疑問は自己消化して頂きたい。ミロに優しくされる、というのを書きたかっただけなのでその後の事は頭になかったです実は( ̄▽ ̄)ハハ。 |